老後の生活資金としてコツコツと貯めたお金をもとに、一人暮らしの70代女性から、ご自宅のリフォームや建て替えのご相談がありました。東日本大震災の折、住宅の一部に損害が出たためです。
リフォームにお金をかけても「使って終わり」で何もリターンしません。でもこれを機にアパート経営を始めれば、かけたお金は家賃を生み出し、十分に今後の年金の足しになります。
こうした検討の結果が、ご自宅併設のアパート経営となった事例です。
当初の資産は、解約する保険と現預金を合わせて約1,500万円と、駅から歩けない場所にある自宅(土地と築40年の建物)。年収は遺族年金と年金型の保険を合わせて約100万円。少しのパート収入でこの方は生活をしていました。このような生活から、アパートに適した土地に自宅を買い替えて、自身がアパート・オーナーとなり、その1室に居住するというスキームを構築しました。
基本的にアパートローンに年齢制限はありません。事業継承者は必要ですが、地主でもなく、高額所得者でもない、一般的な年金生活をしている女性でも事業主となって銀行からの借り入れが可能です。
この事例では高齢の女性が一人で住むことが前提のため、利回り優先の若年層向け1K多戸数設定は避け、社会人やファミリー層の入居者をターゲットに事業を組み立てました。
また、地域コミュニティや生活環境を変えないように、自宅の近接エリアに土地を購入し、庭仕事ができるスペースを確保。このためアパート用地もまた、駅から歩くのはちょっとしんどい距離感の土地となりました。この方の要望をできるだけ満たしつつ、投資的な視点も外さない、ぎりぎりのバランスを、当社、担当建築家、税理士、工事担当事業者の専門家が皆で探る作業となりました。
最近は住宅メーカーを中心に、オーナー住戸付きの投資提案も多くあるようですが、どうしても、事業性よりもオーナー住宅への要望を盛り込みがちで、それが行き過ぎるが故に、アパート経営として健全な事例をほとんど見かけることがありません。基本的に住宅メーカーは、むしろ高額なオプション工事は自社の利益になるため反対をしないので、どうしても事業性のチェックが甘くなるのです。また4戸や6戸などの供給戸数がとても少ない事業は、建設後の資金回収や運用に大きなデメリットがあるのですが、住宅メーカーが苦言を呈することはほとんどありません。このため銀行返済が間に合わず、預貯金を持ち出す事態になっている事例も少なくないのです(自宅分の持出などと称していますが、「自宅部分」と「賃貸部分」の事業計画的区分が明確化されている場合はほとんどありません)。
少し話が膨らみますが、事業規模数百億の駅前再開発事業を手がけてきた当社から見れば、この住宅メーカーの提案と同様に、事業性が十分に検討されていない代表的な事業パターンには以下のようなものがあると思います。