3. 適切な査定

前項では到底、不動産業界以外に職を持たれる方には信じられないようなお話ばかりだったと思いますが、更に怖い話が続きます。

販売活動の前段として実施される場合が多い「査定」の段階から、顧客利益よりも自社利益を、嘘をついてでも追求するという、その体質にブレはありません。

そもそも土地の価格は誰が決めるのでしょうか。

順次、不動産取引の実務事例を引きながら、検討していきましょう。

(1) 不動産業者の無料査定と不動産業者都合

公示地価、基準地価、路線価、多くの基準が公的に設けられていますが、そのいずれが実際の売買の際の価格(市場価格)として相応しいのでしょうか。

このことは多くの方が既にご存じかと思いますが、これらの全てが売買の際の価格としては適切ではありません。

よって、最初に言えることは、不動産鑑定士や税理士が算定する価格査定は、こと取引という観点からは役に立たないと言うことです。では、不動産業者は無料査定も含めて、適切に市場価格を査定しているのでしょうか。

 

以下は当社査定と大手業者の無料査定の比較です。

 

結論は当社が1億超で売却を実現した物件です。なぜ、同じ物件の査定で、8千万とか9千万とか、大手業者の査定には、これ程の乖離が生じるのでしょうか。

残念ながらほとんどの場合、不動産業者は売主のために少しでも高額な査定を出そうとは考えていないのです。自社が両手にまとめやすい価格で売主に納得してもらえるならば、それに越したことは無いというスタンスで査定書が作成されている場合が多いのです。

 

5千万で売却できる可能性のある物件を、4千万や3千万で取りまとめた場合、売主は1000万円も損をするのに、不動産業者はチャッカリ100万円も儲かっているという話は記述の通りです。

では無料査定の段階から恣意的に査定書が作成されていたとしたらどうでしょう。


先人の言葉が重みを増してきたのではないでしょうか。

タダほど、高いものはない

 

これはまさに、こういう時に使う言葉なのだろうと思います。
ちなみに当社では「無料査定」は行っておらず、電話などでの「概算査定」等々、無責任な要素を少しでも含む可能性のある作業は、一切をお断りしております。

 

ところで不動産業者は、逆に高額な査定でないと納得してくれないお客様の場合はどう対応するのでしょうか。

不動産の無料査定には、どれだけ法外に高額な査定を提示したとしても、責任を追及されるような仕組みがありません。

高い査定さえ出しておけば、気分良く媒介契約を結んでもらえそうな消費者に対しては、到底実現できそうに無い査定額であっても、媒介契約獲得の道具として高額査定を出しておき、徐々に値下げをさせれば、それはそれで優秀な不動産営業マンであるとの評価になるのです。

是非、ご記憶いただきたいと思います。
査定金額に一喜一憂して業者を選択することには、実は何の意味もないことなのです。

以上、これまで述べてきたように、仲介業者から提示される査定額は、「適正価格」である場合よりも、不動産業者の営業上の思惑によって決められていることの方が圧倒的に多いのです。

不動産業者の物件囲い込み作戦は、査定の段階から始まっていると考えた方が取引のリスク軽減に繋がることに間違いないのです。

(2) 不動産の価格と誤差

都内23区でも地方都市でも、一切の例外なく、土地の坪単価分布は下記チャートのようになります。必ず分布に幅ができます。これが1坪あたりですから、土地全体やマンション一部屋となれば簡単に数百万円以上・・・時には数千万円の誤差になります。

この事実から言えることは、不動産の適正な売却価格は、無料査定で良く用いられるような、一対一対応的なフォーマットの計算式では決まらないという事です。

 

ではなぜ、全ての無料査定が同じようなフォーマットによって、順次計算していくと勝手に数学のように回答が出てくるようなスタイルになっているのでしょうか。詳細は長くなるので、ご興味おありの方のみ、ご覧いただければと思います。

無料査定について
  • 大手を中心とする無料査定のフォーマットは、不動産鑑定士や税理士の鑑定スタイルを模写したものです。
  • 理由はとても簡単で、消費者が不動産業者の査定よりも、それらに信頼を置いているから。
  • では不動産鑑定士や税理士が一対一対応的に不動産の価格を求める理由はなぜでしょうか。
  • もう、察しのいい方はお分かりだと思いますが、それは、主に売却価格を求めているのではなく、税額を求めているからに他なりません。
  • 税額は算定をするのに、「相場観」やら「取引経験則」などという説明できないような要素を織り込むわけにはいかないのです。幅があってはまずいのです。
  • よって、不動産鑑定士や税理士の評価フォーマットは、緒言を定めれば順番に、誰がやっても同じ回答を得られるような形にしかなりようがないのです。
  • しかし、不動産を売り急ぐ事情がある人と、そうで無い人が、適切なアドバイスを得ることが出来たなら、同じ値付けをする訳がないのです。
  • そうした意味で、不動産の適切な売却価格は売主の都合によって決まるべきであり、私たちは売主がその判断を誤らないだけの十分な情報を、提供するべきなのです。

(3) 不動産の価格分布と売主の事情

ここで話を少し戻します。

土地の価格は誰が決めるのか。
正しい売却価格(査定)とは、なんなのか。

それは。
売主の事情によって決まるべきであると当社では考えています。

正しい価格(査定)の前提条件として存在するのは、「今のあなたの事情にとっての、正しい価格」なのかどうかなのです。

他の多くの品物と何ら変わらない市場メカニズムが働きます。単純な話、売り急げば安売りにならざるを得ないし、時間が掛けられるなら(適正な価格分布の中であれば)、買主が見つかるまで待っていれば良いのです。業者のノルマはあたなには無関係な事柄です。

前段の大手不動産業者の無料査定の紹介事例は、売主は軽い気持ちで業者選定を間違えていただけで、2,000万円もの損害を被った可能性があったという実例です。

しかし、2,000万円も高く売れる可能性があったとしても、現金化することに期限が設けられている場合には、早く売らなければいけないのだから、高値を追求した金額を設定することが、あなたの事情によって出来ません。

よくあるのが、相続税の納税のために土地を売却する場合です。相続税には10ヶ月という納税期限がありますから、「オレが死んだらこの土地を売れ」というお話は、良く聞きはするものの、土地を有利に、高額で売却することは出来ません。

 

「オレが死んだらこの土地を売れ」は、最も代表的な、相続対策にならない相続対策の間違いと言って良いでしょう。

早く売ることが優先なのか、少しでも高く売ることが優先なのか、それは売主にしか決められず、その正しい決定のためには、「価格分布」を適切に読み解く必要があり、その材料を適切に提供することが、当社の仕事なのです。