この数式にならなければならない理由はとても簡単です。建物(アパート)を建てれば、当然にその土地は自由度を失います。その土地は分割して売ることなどできなくて、相当な解体費を掛けない限り、更地にすらなりません。仮にその土地建物を購入した新規取得者も、そうした大きなコストを掛けない限りは、その土地はアパート用地として使用する以外に選択肢がなく、つまりその土地は事実上、ほぼ完全にアパート用地としてしか使えなくなるのです。
その土地は事業に使っており、だからその価値を含めた投資に対して、どのくらいのリターンが得られるかを検証すべきなのです。
「不動産」と呼称される土地が自由度を失うと言うことは、処分(動産化)のハードルが一気に上がると言うことを意味し、言い換えればその場所に、土地の価値である1億円が眠ってしまうという事になります。この土地を売却すれば、現金の1億円を金融資産として運用できるという可能性が、何十年にも渡り失われるのです。
その土地がアパート立地の根拠となっているわけですから、賃貸アパート投資の善し悪しや利回り計算で、上式のように土地時価評価額が分母に加わらないということは、むしろ極めて不自然なことなのです。
この部分は本当に、おそらくは80%以上の地主が間違えており・・・と、言うよりも、ほとんどのアパートメーカーやデベロッパーの提案が最初からそのように表現されているため、80%の投資が成功していない最大の理由と言っても良いだろうと思います。
いくら一月に売り上がるのかという、目先の利益を短絡的に追いかけるのではなく(分子)、その売上を得るためにいくらの投資をしているか(分母)にもしっかりと関心を持ち、常に効率(利回り)を気にしながら事業に修正をかけていくことが出来なければ、その事業が成功する可能性はとても低くなってしまうと思います。
事業のチェックは、あくまでも「総投資額」と「総売上」のバランスで決まります。アパートの敷地としてしっかりと活用されているという現象を、数式にも反映させる必要があるのです。
逆にこの計算が出来ると、賃貸アパート事業は、他のあらゆる投資・・・株式、債権、投資信託、外貨預金、定期預金等々と、資金回収効率=利回りという観点で横断的に比較検討できるようになります。
アパートメーカーの提案書の分母に土地代(あくまでも売却した場合の想定価格)を自分で加えて、それでもその事業が新築時点利回りで6%を上回るなら、その事業はほぼ合格と言う、現在進行中の賃貸アパート事業のチェック方法を紹介します。
感覚的な話となり恐縮ではありますが、アパートメーカーやデベロッパーの提案する8%とか10%の利回りは、分母に土地費を含めて正しく計算した場合、せいぜい4%前後のリターンということになっていると思います。