3.リスク分散

リスク分散という言葉は投資の局面に限らず、日常的に良く使われます。一般的にはリスクを一カ所に集中しない(させない)ことで結果、リスクの低減を図るという考え方でしょう。では不動産における投資リスクの分散とはどういうものでしょうか。

ざっと書き連ねただけでもいくつかの種類、観点があるとは思いますが、ここでは以下の三点に着目し、説明しようと思います。

 ●  ジャンル分散
 ●  時間分散
 ●  エリア分散

(1) ジャンル分散

投資先を不動産、定期預金、投資信託、為替、株式、債券、金等という風に「不動産」「金融」「現物」等々、異なるジャンルに分散する方法のこと(あくまで当社定義)。

これには確かに一定の効果があり、同時にジャンル毎のリスクの大きさも変わるというところまでは多くの方がご存じと思います。

またその指標を、多くの専門家がきっと以下のように定義しているでしょう。

 ● ローリスクだからローリターン    ・・定期預金等(場合により国債もこの位置づけと説明)

 ● ミドルリスクだからミドルリターン  ・・不動産を説明する場合の定型句

 ● ハイリスクだからハイリターン    ・・株、為替等々多くの金融商品

当社がお考えいただきたいと思うのは、現実的に、ローリスクローリターンの代表である定期預金の金利を、はたしてリターンと定義して良いのかどうかということです。また、ハイリスクの株や投資信託に代表される金融商品は、本当に10%以上の利回りを、毎年確実に実現できているのかどうかです。

先述したとおり昨今の定期預金金利はそもそも常軌を逸しており、投資対象として不適格であると考えるのが妥当です。だからこそ、行き場を失った多くの資金が金融商品や不動産に流れ込むという現象が起きています。
一方、ハイリスクハイリターンの典型が株式取引であると言われてきましたが、契約時の「予定利回り」が本当に実現されているか、毎年しっかり10%とか15%の利回りが実現されているのか、数年後に元本も満額払い戻されたのかという「検算」をする人はとても少ないのが実態ではないでしょうか。
これを更に投資期間で割ることではじめて、この金融投資が不動産などと比較できるようになるのです。

{(売却時の総払戻額-当初購入金額-費用)÷当初購入金額+費用 } ÷ 投資期間(年数換算必要)

予定利率10%の商品でも、実際には8%も回っていないというのは良くある話で、それ以上に、上記数式の末尾、経過年数で除して年間利回りをチェックすると言うことを、多くの投資家はしていないだろうと思います。
結局こうした検証がどこかに行ってしまって、最終的には、「でも損はしていない」という、投資のジャッジにおける禁句を用いて自分を納得させてしまうなら、その商品の検討自体、最初からやらないのと同じなのではないでしょうか。

また、これは人にもよるとは思いますが、金融投資には実務上はもっと違った特性もあり、株式に代表されるハイリターン商品に、普通は何千万もの金額をまとめて投資することはなかなか出来ることではありません。
なにをどう言われようと、元本保証が無い以上、土地も建物も無価値になる事はないであろう不動産投資とのリスクの違いを、多くの方が感覚的に理解しているからなのではないでしょうか。
不動産投資にも元本保証は投資価値がゼロに毀損することはむしろ考えにくいでしょう。金融投資は本当に投資価値がゼロになる場合もあり得ます。ここは多くの方が既知の事項なのではないでしょうか。

まとまった金額の投資は、定期預金金利の惨状が続くのであれば、今時は不動産に対してしか実施することが難しいというのが、昨今のアパート投資の加熱に繋がったという部分はあると思います。

(2)時間分散

身の回りの駅徒歩圏などに、同一オーナーのものであろうと思われる賃貸アパートが、ある時期に一気に多数棟、供給されるようなケースを目にした方もあると思います。
多くは相続対策が必要な時間をかけて適切になされてこなかったため、一時期に建てざるを得ないという状況に追い込まれてしまった場合が多いのでしょうが、当然に負っているリスクは大きくしかなりません。
自分がさぼった分だけ、自分に返ってきたと考えた方が良いでしょう。

  • 入居者の募集は同時期となる
  • 自らの物件が競合して賃料を引き下げることもある
  • 同時に建設したアパートは同時に補修や建て替えの時期を迎える

複数棟の建設時期がずれていれば、ある程度老朽化した最初のアパートの補修費用を、後発の賃料が潤沢に売り上がるアパートの賃料から捻出するという資金のやりくりも可能となります。
一つの方途に過ぎない考え方ではありますが、当社ではこの時間分散に短期譲渡の課税時期を見越し、築5年以内の築浅物件を資産入れ替えによって保有し続けるというスキームを構築しようとしている顧客もあります。

(3) エリア分散

もっともありがちな投資方法は、自宅周辺や同一駅勢圏に何棟ものアパートや貸しビルを保有するという投資法でしょう。しかし当然にこの手法は非常に大きなリスクを負います。
阪神淡路大震災や東日本大震災以前であれば、こうしたリスクに想像が及ばないことも無理は無いのかもしれませんし、一極集中型の投資は、管理も楽であるというメリットもあるでしょう。

しかし、人知を越える震災やゲリラ豪雨、竜巻、大雪などの異常気象も含めた災害は、もはや珍しいことではありません。10年に一度の豪雨が近年は一年に何回発生したでしょう。
これらに対応するためには、我々人間の側が投資対象を物理的に離隔するという発想を持つべきでは無いだろうかというのが当社の提案です。こんな簡単なことがこれまでの文献では意外と提案されてきておりません。

ちなみに当社では設立の2000年以降、一貫して住宅取得向け顧客に対しても、湘南エリアの海一列目等の土地購入には慎重にも慎重を期するようにと、注意喚起をし続けてきました(むしろ明確な反対と言ってもいいかもしれません)。

鎌倉の海沿いや葉山町、片瀬海岸の海一望の土地は、概ね坪単価で200万円程度。不動産ビジネスとして考えれば非常に大きな利益を生みます。しかし購入をされた後、安全、安心にその土地をそのご家族が使えてこそのコンサルティングです。こうした買い物に、当社は安易に賛同することは出来ません。
これは投資という側面で考えてみてもなんら変わりが無く、災害リスクに関する視点はこれまで当社が取り組んできた以上に、今後は更に注視されるべき事項なのだろうと思います。