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補修の理由
多くの木造建築物の改修、補修の理由は木材の腐食でしょう。
本件の場合、これに10年間の喫煙によるたばこのヤニも加わり、室内は構造的ダメージ以上の痛みというか、目も当てられないほどの汚さでした。
中古住宅の購入を検討している方が、この建物を見れば、多分、購入してから直そうとは思わない(思えない)のでは無いでしょうか。
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この部屋の木材の腐食は完全に根太を落としてしまい、このため床と壁の間には写真の通り、10cm程の大きな隙間が出来てしまっていました。冬の隙間風は言うまでも無いし、まして壁面最下部ですから、暖気の上昇効果もあって、機械換気のような勢いで冷気が吹き込んでいました。
床の傾きによって物置となっているパソコンデスクも傾いています。もっと質が悪いのは書棚で、なまじ多くの書籍が詰め込まれていたため、大きな荷重が痛んだ床に更にダメージを与えていました。
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腐食で完全に切断された根太というのは、私たちでもあまり見る事がありません。
しかし。
でも、水の浸入が無い部分が、実はそのまま利用できたりするのが木造の凄いところです。書棚撤去後(一旦、仮撤去)の写真ではヤニの様子が分かりやすくなっています。
壁補修の工程
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木造の壁補修の場合、小舞壁等々の特殊なものを除き、昨今は多くの場合はボードを使い、ここまでの工程はほぼ共通と考えて良いと思います。小舞壁ですら、竹の造作ごとボードで押さえ込んでしまうと言う、ローコスト対応の工事も可能です。
ここからの仕上げを、もっとも安価に抑えるならば、多分クロス仕上という事になるでしょう。
下地を調えた後に一気に大きな面積にクロスを貼ってゆきます。もっとも無難で清潔感も出しやすく、部屋の用途も選ばずに採用することが出来るので、建物全体の統一感も簡単に出せると思います。
塗装を正しく施工するためには、ボードの上に更に丁寧に下地材を貼る必要があると思います。このあたりの処理が、ペンキ仕上げの場合のコストをどうしても上げてしまいます。
ペンキ仕上げのすすめ ・・検討の材料
しかしコストダウンを優先する場合、本件のようにボードに直接塗装しても十分に綺麗に仕上がります(個人の感覚に寄りますが)。
そしてペンキ仕上げの魅力は、以下のように、実は数え上げればきりがない程なのでは無いかと思います。
● 調合によってありもしない色彩を好きに、自由に、無限に作れる →完全に無限です
● 汚れてもぼろく見えにくく、味が出る
● 色彩変更だけで、部屋の個性を180度、変えてしまうような演出も可能
● 部分的な差し色のアクセントが、微細部分にも出しやすい
正直に申し上げて、今時はペンキは敬遠されている材料でしょう。
でも、新築の仕上がりで建物を考えてしまうからそうなるという一面もあり、10年、20年、ちょっとメンテナンスをサボってしまった時の、よれてひび割れたクロスの部屋と、ところどころにシミが出てきたペンキの部屋、どちらに味が出ているかも想像してみてはいかがでしょうか。
なによりも、全室同じ仕上げにしなければならないと言うことはありません。ばりっと一部屋、多少コストは係っても、世界に一つしか無いあなたの家族だけの色を、塗装のプロと一緒に調合してみるのも、建築の楽しみ方の一つだろうと思います。
仕上がりと費用
施工前と施工後を、同じ角度から比較してみましょう。
建具は薄いグレーで統一しています。緑の差し色は、グレーを徐々に調合して決めました。
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ちょっと同じ部屋だと言うことに、無理があるほどの仕上がりになっていませんか。この一部屋の改修費用は約60万円。
しつこい様ですがクロス仕上げで良いならば、更にコストは下がりますが。
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