一棟もの賃貸アパート購入時の注意点

投稿者: | 2020年7月26日

相続対策や不動産投資のための数億にもなる取引ですが・・・

しかし意外に開示される情報は個人の戸建て住宅の取引よりもはるかに少ないのが実情です。

注意点を簡単にまとめます。

目次

 利回り4%の提案

大手ハウスメーカーを中心に、特に首都圏への投資に際し、3~4%程度の利回りの提案をよく見かけます。利回りは低いというだけで、簡単に大きな売上差額が発生してしまいます。

 

例えば当社コンサルティングの+Cシリーズの賃貸アパートの多くは6%という利回りを実現しています。

 

例えば同じ2億円という投資額を、当社提案の6%の事業と、他社提案の4%の事業に投じた場合、各々の年間賃料は1,200万円と800万円となり400万円もの大きな売上差額が発生します。言うまでもありませんが、賃貸アパート事業は息の長い事業です。この売上差額は、5年後には2,000万円、10年後には4,000万円と、長期に渡れば取り返しようのない、埋められない大きな差となります。

総投資額の定義

また既に土地を所有している方に対しては、多くのハウスメーカーやアパートメーカーは、一般的に土地費を含まない事業計画を提示してくると思います。

本来、総投資額は所有している土地だから無料なのではなくて、その土地が他用途に使用できなくなるわけですから、建築費に加えて土地費を含めなければなりません。そしてその評価は、その土地の実勢価格であるべきですから、仮にその土地を今、売却したときに得られる価格である必要があります。

ハウスメーカーやアパートメーカーから、土地費ゼロの事業計画の提案を受けた場合には、ご自身で賃貸アパートの敷地として永年使われてしまう、ご自身の所有地(賃貸アパートの敷地)の市場価格(売却可能性のある価格)を加えて利回りを再計算されると良いでしょう。

 レントロールにおける情報操作

ご存じの通り、レントロールとは入居状況や賃料状況を開示するデータですが、当月とか、2、3ヶ月程度の短期間の情報であれば取り扱いには特に注意が必要です。

  • 関連会社の関係者が見せかけ居住する
  • 空室部分に通常の3倍とか5倍という、訳の分からない高額報酬を設定して不動産業者に埋めさせる

言うまでも無くこれらは一棟もの賃貸アパートの取引を進める上で、売主が買主を欺く行為に他なりませんが、売主が開示しているのは「当月の状況」です。嘘は一つもついていません。だから買主はこうした取引に巻き込まれないように、きちんとした調査をしなければならないのです。

 

この手口は、概ね三ヶ月~半年くらいであれば、仕掛けた売主側も嘘をつき続けられるでしょう。用も無い物件に見せかけ居住したり、健全性を欠いた賃料で入居者を住まわせ続けたりということも、その程度の期間であれば取り繕うことができてしまうのです。

 中古の一棟アパートの場合

最初に一つ言い切れることは、確実に自身が雇用する、信頼できる専門家、一級建築士等のサポート無しに、絶対に手を出さない方が良いと言うことでしょう。

 

中古物件の取引には補修リスクがつきものです。そしてそもそも賃貸アパートを新築時、高級仕様で建設することの方が希ですから、賃貸アパートの中古物件の場合にはどこかのタイミングで大きな補修費用は必ず支出しなければならないと考えた方が安全でしょう。

 

通常の個人住宅の中古程度の話であれば、補修費用と言っても個人がコントロールできる範囲で収まるかも知れませんし、ある程度の不具合は自身の家族が我慢すれば事足りるものもあるでしょう。

 

しかし賃貸アパートの場合には、そうした不具合が直ちに入居率や賃料に反映されてしまいます。更にその不具合を放置して、仮になんらかの事故が発生した場合、家族は許してくれても入居者は許してくれません。

 

利回り10%等の、耳障りの良い営業文句にダマされず、その先の将来に来たるべき補修費用がどの程度あり得るのか。専門家の意見を聞きながら、取引を進める必要があるでしょう。

まとめ

本項を簡単にまとめると以下の通りです。そもそも不動産の取引において、消費者は能力とか知識と言うよりも情報という面で圧倒的な不利益を抱えています。不動産業者は多くの情報から自身に都合の良いものだけを提出したり、あるいは加工したり、任意に取り扱えるような仕組みになっています。

 

一棟もの賃貸アパートの取引は少なくとも数千万以上の、通常の戸建てとは異なる規模の取引となります。くれぐれも慎重に、適切な分野の専門家を十分に整えて、のぞむ必要があるのです。

  •  利回り4%程度未満の事業には投資すべきではありません

その不動産ならば、他のジャンルに投資した方が良いと思います。

  • 総投資額には土地代が含まれているか、しっかり確認しましょう

土地代を含めて計算した途端、なんの魅力も無い事業になる場合が多いです。

  • レントロールは最低、過去一年分の開示を求めましょう

開示できない売主ならば、何かを隠していると考えましょう(その方が安全です)。

  • 中古一棟ものは専門家と一緒に検討しましょう

専門外ですから税理士のお勧めなどは、絶対にやめておいた方が良いでしょう。