不動産取引の止め方

不動産取引の止め方

買付証明を書いたら? 売買契約をしたら? 不動産の取引はまだまだ止められます

 

 [ この記事のポイント ]

 ● 買付証明書(や譲渡承諾書)の授受には基本的に、なんらの法的拘束力はありません

 ● 売買契約締結後であっても、不動産の取引は止められます

 ● 決済・引き渡しの直前でも、不動産の取引は止められます

 ● ただし、「タダ」ではありません

 ステイタス:買付証明書

ご自身が誠意を持って「買付証明書」を売主に提出したのだから、その後で話を反故にするのは申し訳ないとお考えになる方は、勿論、非常に良識のある方なのだろうと思います。でも、もしもその買付証明が不動産業者にせき立てられるようにして、十分な検討時間も無い中で半ば書かされたようなところがあるものであるならば、拘束される必要はありません。

 

そもそも「買付証明書」に法的拘束力があるならば、売買契約が意味を持たなくなります。

 

勿論、この記事は、無闇な心変わりでの売買意思表示の破棄だとか、売買契約手続きの混乱を推奨するものではありません。でも、業者の中には強引な手法で買主に検討の機会や断るという選択肢を与えないようにして、自身の営業点数を稼ごうとする者も少なくありません。

 

そんな時、是非勇気を持って、一生に係わる決断を、流されるままに進めてしまいませんように。

「止める」ということも出来るのだと言うことを、お伝えしておきたいと思います。

 ステイタス:売買契約

「でも「売買契約」までしてしまったら(させられてしまったら)、流石にそれは取り消せないだろう」

 

多くの方がその様にお考えになるでしょう。でも、売買契約には必ず契約解除の条項が定められています。つまり、契約条項に従って売買契約を解除することは、なんら契約違反では無い、売主・買主に正当に認められている権利なのです。

 

ただし、「売買契約」は「買付証明」とは異なり、正式な法的手続きです。このため契約時に「手付金」の授受がありますが、契約を止める代わりに手付金を、迷惑を掛けた相手方に支払うことが必要となります。逆に言えば、手付け解除期日(ないしは相手方履行の着手)までの期間であれば、手付金分の金銭を相手方に支払えば、売買契約は止められるという言い方も出来ます。

 

逆から見るだけで、見え方は大きく変わりますよね。

 ステイタス:決済引き渡しの直線

それでもまだ、不動産取引は止められます。要するに不動産の取引というのは、最後の最後、「引き渡し」が完了するまでの間は、いつでも止めることが出来るのです。ただし、後になればなるほど、相手にも迷惑が掛かりますし、迷惑が掛かる関係者の人数も増えていきます。このため、後になればなるほど、不動産取引を止めるために相手に支払う金銭が、基本的には高額になっていく仕組みになっています。

 

なお「買付証明」「売買契約」「手付け解除期間」というステイタスが経過した後の契約解除は違約解除となりますので、相手方に対して違約金の支払いが必要になります。

 具体的計算例

仮に、売買代金6,200万円の物件を6,000万円に減額交渉した取引で、手付金300万円=5%、違約金10%=600万円だった場合を例として、具体的な取引を止めるために必要な費用を計算してみましょう。

(1) 買付証明の段階 →無償解除可能

(2) 売買契約の段階(手付け解除期日未到来) →手付金300万円の支払い

(3) 引き渡し直前(手付け解除期日経過) →違約金600万円の支払い

*一般的な内容を記載しています。

 まだ続き

繰り返しますがこの記事は、契約の解除など、一切推奨しておりません。不動産の売買契約は、お互いに慎重に、じっくり検討した上で、購入申し込みや売却の承諾がなされなければなりません。ただし、不幸にもそうならない仲介態勢が決して少なくないことも事実です。そんなときに、思い出していただければ良いなと考えながら記事をまとめています。

 

不動産の取引は、引き渡しまではいつでも止めることが出来るのです。

 

 

以上を大前提として、もう察しのいい方はもうお気づきのことがあるでしょう。

 

(3)の時点で、この不動産を7,000万円で購入したいという別な買主が現れた場合です。契約の解除権は当然に認められた権利ですから、相手方に600万円支払って、高額買主と取引をすれば良いのです。これが(2)の時点であれば、6,500万円でも良いかもしれません。

 

買主は可愛そうではありません。売買契約書を作成しただけで、300万円なり600万円を労せずして受領できるのです。貯蓄しようと思ったら大変ですよね。その費用から必要な仲介手数料支払いを済ませても、積みました予算で、今よりももっと良い不動産を購入できるか、あるいはぐっとローンが軽くなるのでは無いでしょうか。

 

「それでも欲しい土地が買えなかった買主は可愛そうだろう」

 

そんな事はありません。なら最初から値切ったりしなければ良いのです。この買主が200万円の減額交渉をし、6,000万円の価値しか無いと考えた同じ不動産に、別な方は7,000万円の価値を見いだしました。

 

それはもう、商取引に単に負けたと言うだけのことでしょう。でも大きな手土産がありますから、この経験を次の取引に活かされることを私も期待することと致します。

 

…という様な状況ですから、解除されたくない場合の条件設定は、手付金600万円(10%)、違約金20%(1,200万円)等々の設定とすれば良いのです(という風に当社では提案して調整するように努めています)。

 

ただし非常に重要な注意点です。

 

不動産の売買契約というのは、基本的に売り主と買い主の権利を公平に認めた内容となっています。ですから、相手が契約を解除したり違約した場合には高額に費用支払いを請求できますが、自分の側に止めざるを得ない状況が生じてしまった場合にも、同額の支払いを請求されることになります。

 

この点は慎重に、専門家と検討の上で設定する必要があるでしょう。