不動産売却に対する『時間の作用』

投稿者: | 2020年12月28日

不動産の取引において、『時間』はとても重要です。
特に売買の場合には、もしかすると『もっとも重要』と言っても良いかもしれません。

目次

結論

説明をせずに結論から書くのは簡単な話だからです。

買主から売主たるあなたがどうみえているか、想像してみるだけで分かります。

あなたには時間が無い = 急いでいる ≒ 期日に迫られている

買主は、わざわざ高い買付条件をあなたに提示してくるでしょうか。

構造と理屈

不動産の取引は必ず利益相反関係を含むような仕組みになっています。このため時間が無いことはそもそも不利な条件です。ほとんどの交渉は時間の無い方が何かを譲る形で決着しているということは、簡単に想像が付くのではないでしょうか。

 

これは基本構造ですから不動産の売却に限りません。不動産の購入でも同じです。不動産の賃貸借でも例外なく生じます。

 

でも買主の場合には、不利な交渉が始まった時点で、買わなければ損をする事はありません。借主はもっと気楽で、簡単に他の物件に変更できるでしょう。

 

ところが売主が数千万円の相続税納税期日や、数百万円の違約金発生という決済期日、という「期限」に迫られた場合、撤退という選択肢がありません。不動産取引の色々な立場の中で、「時間が無い」という不利益がもっとも大きく作用する立場は、取引額が大きく、しかも撤退が出来ない状況になった売主なのです。

 

 

 

わざわざ時間に窮している売主に対して、売主が感謝するほどの高額買付条件を提示してくる買主など、居ないと考えていた方が良いでしょう。だから当社では、売主のコンサルティングの場合には、なにを置いても売主の事情から時間的不利益を売主自身が被らないように、そうした条件を極力、排除解決することに注力するのです。

 

特にその取引が高額な場合、この傾向は一層顕著になると当社では考えています。

日本人の所得分布と住宅予算

このグラフは厚労省の国民生活基礎調査から年収2千万以下の分布と、財務省の「日本の所得税負担の実態」というレポートから2千万超分布を重ね合わせて当社にて作成したものです。

 

正確にどの年収の人たちが何人居るのかでは無く、概ねの分布としてどういう状況なのかをご確認下さい。

そもそも年収1千万を超える消費者は15%未満。

年収2千万超は1.5%程度。

この状況で8千万円の中古マンションとか、1億を超える中古住宅を売却しようと考えた場合、年収1千万超の方をターゲットと想定すれば15%の消費者の中から探さなければならないと言うことになります。また、年収1千万ではそうした物件を購入することは難しいだろうと考えるのであれば、売却相手は更に一気に減って、1.5%の消費者が相手と言うことになるのです。

逆に、多くの建売住宅が5千万円以下に価格設定されていますが、これは年収1千万以下の80%の消費者をターゲットにしているのだと、グラフで整理するととても分かりやすくなります。

8千万円の中古マンションとか1億を超える中古住宅は、5千万円以下の物件の流通速度に比べて、圧倒的に購買層が少ないわけですから、適切な売却を求めるならば、時間が掛かるのは当たり前のことであり、その傾向は物件が高額になるほど、顕著になっていなければ、どこかがおかしいのです。

「億近い物件がたった数日で売却できた」というのは、単に安売りしただけ(させられただけ)の可能性が極めて高いと言うことを暗に申し上げているのです。

査定の大きな誤差

不動産の無料査定で「8千万円」という評価が出ても、別な業者が「9千万円」と査定し、最終的には当社が「1億超」で売却したというケースもあります。

 

この作業の中で、確かに当社はもっとも高額に売却を実現するとは思うものの、「8千万円」や「9千万円」の業者よりも、理屈上、時間は掛かると思いますと言うことを、売主様にご理解いただいたことは言うまでもありません。

大手二業者の「8千万円」や「9千万円」という査定は、もしかすると、時間の無い、急いでいる売主の立場であれば、あながち間違ってはいなかったと言うことが言えるかも知れません。

 

しかし、「1億円」の予算の買主の出現を待つ時間がある売主にとっては、とんでもない損害です。言い換えれば、たった一回の不動産売却取引で、時間があるのか無いのかによって、簡単に数千万円の損害が出てしまうのだと言うことが、ご理解いただけるのでは無いでしょうか。

絶対に回避すべき事項

「早く」ではなく「高く」を指向する売主であれば、絶対にやってはいけない3つの事があります。不動産の売却において、なにを置いても当社ではこの3つの事項を最優先で回避することを考えます。詳細は別頁にまとめます。