賃貸アパートの採算確認方法2

賃貸アパートの採算確認方法2

駄目な賃貸アパート事業の提案事例と、その理由。

 

 [ この記事のポイント ]

 ● 賃貸アパートの採算確認方法には、正しい利回り計算の公式がある。

 ● その公式に則ったものの中で、初めて利回りの優劣比較が出来るようになる。

 ● きちんとした運用をしないと、相続税や譲渡所得税で問題が生じる。

 月額賃料「だけ」の提案

月額賃料 200万円を、お受け取りいただけます。

・ 駅前徒歩5分ですから、空室リスクも、ほとんどないでしょう。

・ 土地建物全体で、購入価格=総投資額は6億円です。

実際によく見かける、駅前立地を中心に賃貸アパートを展開している業者の提案例です。毎月200万円が、多分、手堅く入ってくるだろうと魅力を感じてしまう方は要注意です。

 

例えば当社提案の物件は横浜、川崎、船橋、大宮等々で6%程度の利回りを実現していますが、投資額が6億円なら年間賃料売上は3,600万円にもなります。いずれも駅徒歩15分弱の立地ですから10%くらいの住戸が常時空室だったとして、3,250万円(入居率90%)。それでも上記提案を毎年800万円以上も上回ります。

 

駅前で満室の高額投資よりも、空室があっても安価な投資の方が回るという事は、事業の世界では全く珍しい事ではないのです。

 建物費「だけ」の利回り提案

・ 既にお持ちの土地にアパートを建てるだけだから、土地費は無料です。

・ 建物費用を銀行借り入れして、その利回りは10%になります。

賃貸アパートメーカーの利回り提案は驚くことに、土地費を含めず、建物費だけで計算している場合がほとんどです。賃貸アパートは「土地」に「建物」を建てることで、はじめて成立する事業であり、土地を除けば事業は成立しません。また建物がある限り土地だけを売却すると言うことは出来ず、土地評価額分の資産はその場所に眠ってしまいます。そう考えると、賃貸アパート事業の利回り計算は、あくまでも、以前から所有している土地であったとしても、投資額には見なしの土地価格を含めて計算をする必要があるのです。

 

なぜ土地費を含めないとダメなのかは、とても分かりやすい事例として、全国の駅前を中心に実施される再開発事業を見れば明白です。公共事業として市や県のみならず、国からも補助金が執行されるため、厳格な透明性や公平性が求められ、数多くの地権者の資産を共同化することが特徴ですが、この事業で駅前の土地所有者に対して、「皆さん、土地は既にお持ちなので」と言って、土地費を総事業費に含めないケースなどは、ただの一例もありません。

 

全国の中心都市駅前で、数百億の再開発事業を推進するコンサル会社はまさに事業のプロ集団です。そう書けば、いかに多くのアパートメーカーの考え方が、事業検討の方法として不適切なのか、ご理解いただけると思います。

 

この計算をきちんとやれば、一般的に利回りは一気に半減します。

 以上の提案が論外であるもう一つの理由

法定再開発事業は地方主要都市でも多数事例がありますから、皆様の生活圏にもあるだろうと思いますが、その際の事業性検討に、「収益/(土地費+建物費)」以外の公式はありません。

 

公共事業であるこの事業スタイルを範とすれば、それらの健全な事業検討と、対等に評価選別が出来ない事業提案スタイルは論外であるという言い方が出来るでしょう。上記二種類の事業提案は、提案形式として、そもそも土俵にすらのらないものなのです。

月額売上のみで、利回りが提示されないなら事業の是非は検討できない。

● 土地費を含めない計算値は、利回りとは言わない。

 正しい計算の更に先

・ 年間賃料1,000万円 / (1.5億円の土地+1億円の建物)。

・ 収益/(土地費+建物費) ・・・という正しい計算が出来ています。

・ これで初めて、この事業の善し悪しが検討できる状態になるのです。

正しい計算が回答を出していますから、検討はとても簡単です。4%の利回りしかないのなら、その事業は 「やらない方が良い」 が結論です。よほどの特別な事情でも無い限り、瞬間的に判断して良い程、ダメだと簡単に分かる利回りです。

 

これは論外では無く、問題外と言ったところでしょうか。

 

しかし、こういう提案は実は少なくないと言うよりも非常に多いです。これはむしろアパートメーカーよりも一般的に建物費が高額になるハウスメーカーの提案でよく見かけます。実際に大手ハウスメーカから、この程度の新築物件投資を奨められた方は多いのではないでしょうか。

 

確かにハウスメーカーの建物は、賃貸アパートメーカーのそれよりも一般的にしっかり出来ています。ただしその分、費用も20%~50%割高な印象なので、賃貸事業としては収益的に劣ってしまうものがほとんどなのです。

 まとめ

ところが驚くことに、ほとんどの賃貸アパートメーカーやハウスメーカーの提案は上記のいずれかとなっているのが実情です。つまり多くの事業は、公共事業で行われているような一般的な検討とは異なる、独自の判断によって推進されているという事になります。

 

事業主が構わないならそれでも良いのですが、これはもう一つ大きな弊害があります。

 

(1) 自用地で、そのままの事業着手

(2) 敷地をより適正立地に移転しての事業着手

(3) 頃合いの中古物件を購入

(4) あるいはその他の投資

 

そうした他の手段との横断的な比較が出来なくなるのです。

 

比較が出来ないなら、事業者の説明に従えば、土地がタダで手間いらずの(1)に勝る事業はありませんから、自然に多くの方が(1)を選択しています。

 

もしかすると、(2)~(4)を比較できない提案の形にしてあることこそが、最初の最初から営業マンに落とし込まれている部分なのかも知れません。