「洋館」や「古民家」など、探すのに苦労しますよね・・・
なぜこれほど分かりやすいキーワードが、物件として見つけにくいのか。その背景と対策についてまとめます。
目次
はじめに
古民家を改装してお店を経営したい。
洋館を直して、一部、歯科医院にできないか。
そうしたご相談を当社ではよく頂戴します。
ところが現状、そうした要望に対応する様な、『適切な』物件検索の仕組みは確立されておりません。
公共性のある不動産物件情報サイトのレインズには「洋館」や「古民家」という検索キーワードが設けられていませんし、そこに目を付けた民間業者の検索システムやポータルサイトは、全てが自社の利益を優先していると共に、レインズの情報量に圧倒的に劣ります。
このため自分で街歩きをして探すという、アナログな手法がもっとも有効となる訳ですが、さて、ではどの様に建物を見立てれば良いのでしょうか。
ここでは街歩きの中で、古民家や洋館、あるいはリノベーションによって「生まれ変わる可能性のあるぼろ屋」のチェックポイントをまとめてみようと思います。
街を歩きながらあるいは車から眺めながら、どこに注意すればそうした建物を見つけ出すことが出来るのか。そんな観点でまとめてみようと思います。
窓、窓枠
建物の印象として、あるいはファザードと言っても良いですが、窓は重要なポイントになります。
窓枠がアルミサッシか木製建具かによって、建物の印象、優しさというものは大きく変わります。
事例写真を掲載しますが、遠目にもペンキがはがれかけていることが分かります(写真では分かりにくいですが)。また、縦横の水平垂直がゆがんでしまっているのも、金属に比べて弱い木造の特徴である可能性を示唆しています(むしろ私たちには好都合)。
逆にソコにアルミサッシを後からはめ込むと、明らかに異質な、違和感のある仕上がりになっている場合が多いです(これも使えるかも知れません)。
要はぱっと見、新建材の格好悪さではなく、バランスを欠いていた方が良いと言ったら話は分かりやすいかも知れません。
という訳で、「窓」に注意してみるというのは一つの有効な手段と言えると思います。
ガラス
昔ガラスという言葉を聞いたことがおありでしょうか。まだガラス生成技術が未熟な時代、ガラスの中の空気を除去したり、大きな面を均一に組成することが出来ず、「なんとなく、可愛く向こうがゆがんで見える」ガラスのことです。
これを逆手にとってかは知りませんが、ダイヤガラスに代表される曇りガラスのバージョンは、思った以上に当時から豊富なものでした。
以上は説明の必要の無い、本物と考えて良いでしょう。
逆に今時は注意が必要なのがステンドグラスです。この文化はむしろ廃れなかったからこそ、素人が趣味で作った程度のレベルの製品が多数出回るようになりました。発色が妙に鮮やかだったり、つなぎが必要以上に非常に細かったり。それがダメだと言っているのでは無く、当時の技術では難しそうな造作ならば、それは古い建物である可能性は低いだろうと思います。
屋根勾配
洋館や古民家であれば、やはり瓦の風合いが良いのではないでしょうか。勿論、和モダンの初期の、鉄筋コンクリート(以下「RC」と言います。)造りには陸屋根という形態もありますが。
ところで「瓦には防水性能がありません」。
聞けば驚かれるかも知れませんが、その様に考えておけと言うのが先人の知恵です。これは、「住宅敷地の地盤・・・土は動いている」と似たような専門分野の人間の常識です。
しかし昔は洋の東西を問わず、瓦は屋根材として多用されましたから、自然に古い建物は緩い屋根勾配で作ることが難しかったと言えます。これが老朽化して、徐々に雨漏りが始まり、お金を掛けずに直すにはどうするか。すっぽりトタンなどで覆ったりします。
その進化形はこちら。
この場合、屋根勾配は変えることが出来ませんから、外観の屋根形状からその建物の歴史を、ある程度、判別することが可能です。そしてこうした建物は、このトタンをはがしてみると、驚くほど上質な素材が使われていたという場合が少なくありません。
逆に言えば、最近の建物は法令制限一杯までの高さの中に、空間バランスを欠いてでも目一杯に天井高を確保しようとしますよね。なら屋根は出来るだけ、緩勾配に掛けようとする場合が増えていると思います。
木造の改修(耐震はさておき)
木造の最大の優位性の一つは、腐った部材だけをどんどん交換できてしまうところかも知れません。これはRCではかなり不可能に近いです。
また、間取りは勿論、階段の向きすらも変更が可能です。配線工事も改修時に隠蔽にするのは難しくないですし、屋根までいじればお金は掛かりますが、掛け替えも出来なくはありません。これらのことは基本的に、鉄骨では出来ないか、相当に難しくなってしまいます。
木造がRC造や鉄骨造よりも優れていると一概に言い切るつもりは毛頭ありません。ただ、洋館や古民家のような古い木造建築というのは、一般の方が考えている以上に、非常に大胆に、ドラマチックに生まれ変わる可能性があると言うことをお伝えしています。
まとめ
以上、大変簡単ではありますが、古き良き建物を、効率的に見いだすイメージが湧きますでしょうか。
本項が何かのお役に立ち、また、それが今、日々解体の憂き目に遭っている洋館や古民家を、一つでも多く、次世代に引き続くことに繋がればと、切に願う次第です。