目次
[ この記事のポイント ]
● 東京からの人口流出は統計的にも確認したが、周辺都市での用地選定はどうすべきか。
● 都市の人口の大小と賃料単価には関係性が無い。
● 都市の人口増減と賃料単価には関係性が無い。
● 最寄り駅の乗降客数の大小と賃料単価には関係性が無い。
はじめに
賃貸アパート経営を具体的にイメージした場合、ほとんどの方が、「何から考えれば良いか」で迷われることと思います。その中でも多くの方が、購入すべき敷地はどのエリアが適切なのかという問題では悩まれるのではないでしょうか。
(1) 人口が多いエリアに「すべき」である
(2) 人口の増加しているエリアに「すべき」である
(3) 乗降客数の多いエリアに「すべき」である
(4) 乗降客数の増加しているエリアに「すべき」である
(5) 以上、全てを満たすエリアであれば最強なのだから、間違いが無い
以下、当社のコンサル案件に関して、人口や乗降客数と物件の賃料単価に関する傾向をまとめてみます。
人口の多いエリア
当社コンサル案件の中で人口が多いのはB横浜市金沢区、C横浜市港南区、D川崎市川崎区です。そもそも人口はどこまでの範囲でデータを取るかによって傾向が変わってしまいます。例えば「横浜市」で考えれば膨大な人口になりますが、「港南区」で考えればその数は一気に小さくなります。よって人口に関しては前段の定義を明確化しないと、実は検証する意味があまりないのです。
それでも「人口が多いなら結果も良いに決まっている」という方のために、一応検証してみると、これらBCDの1㎡あたりの賃料単価は、2,597円、2,786円、2,566円と悪くありませんが、1/4くらいの4万人しか人口の無いF所沢市の2,488円と大差ありません。
● 人口20万くらいの都市の賃料実績は2,500~2,700円程度
● でも、その1/4しか人口が無い都市でも賃料は2,500円とほぼ同レベル
● 人口が多い方が有利という傾向は、全くない
人口増加率の高いエリア
「いやいや、関係しているのは増加率の方だろう」という方のために、人口増加率の傾向も見てみましょう。当社コンサル案件の中で人口増加率が多いのはD川崎市川崎区、E船橋市、F所沢市であり、人口増加率が「マイナス」ないしは1%未満と少ないのは、Aさいたま市桜区、B横浜市金沢区、C横浜市港南区です。しかしグラフから明らかなように、物件賃料と人口増加率の間にも、関係性は無いと言うことがお分かりいただけると思います。
● 人口増加率はグラフから、減少している都市の方が、むしろ物件賃料が高い
● 都市の熟成が進み、居住者の人気が出やすい…などと屁理屈を言う意味は無い
● 人口が減っている方が有利、などいう事も、論理的にあり得ない
● つまり、人口増加率と物件賃料には関係が無いと考えるのが合理的
駅乗降客数の多いエリア
同じ要領で、乗降客数を検証してみましょう。駅乗降客数*1が多いのはD川崎市川崎区、E船橋市であり、一日当たり40万人を超えています。一方駅乗降客数が一日当たり、10万人にも満たない都市は、Aさいたま市桜区、B横浜市金沢区です。
D・EとA・Bの乗降客数の平均は各々、約45万人と7万人くらいですから、そこには6~7倍の人数差があることになります。普通に考えれば明らかにDEがABよりも有利な賃料を実現しているという結果が出そうなものなのですが、明確な傾向を、発見できた方はいらっしゃるでしょうか。
人口の大小、人口増加率と増減だけではなく、最寄り駅の乗降客数ですら、賃貸アパートの賃料の有利不利には、なんらの関係も無い
と言うことが、分析データの裏付けを持って、ご理解いただけたのでは無いでしょうか。続いて利回りと人口、人口増加率、乗降客数の関係を検証してみましょう。