賃貸アパートの立地選定3 物件利回りと人口等の関係

投稿者: | 2021年6月15日
物件利回りと人口等の関係

目次

 [ この記事のポイント ]

 ● 東京からの人口流出は統計的にも確認したが、周辺都市での用地選定はどうすべきか。

 ● 都市の人口の大小と利回りには関係性が無い

 ● 都市の人口増減と利回りには関係性が無い

 ● 最寄り駅の乗降客数の大小と利回りには関係性が無い

 はじめに

賃貸アパート経営を具体的にイメージした場合、用地選定の段階で、多くの方が「人口、乗降客数」という要素を考慮されるのではないでしょうか。しかしそれが意外にも、㎡当たりの賃料単価とは全く関係が無いことは別資料でまとめたとおりです。

 

賃料単価の考察はあくまでも単位面積あたりの売上の確認に過ぎませんから、投資額とのバランスが考慮されていません。例えば有名なのは銀座での投資シミュレーションですが、一般的な都市の10倍の金額で土地を購入し、5倍の賃料を得ることは無意味であるという話です。

 

以下、当社のコンサル案件に関して、人口や乗降客数と物件利回りに関する傾向をまとめてみます。

 人口の多いエリア

当社コンサル案件の中で人口が多いのはD川崎市川崎区とG仙台市太白区です。そもそも人口はどこまでの範囲でデータを取るかによって傾向が変わってしまいます。例えば「横浜市」で考えれば膨大な人口になりますが、「港南区」で考えればその数は一気に小さくなります。

それでも「人口が多い方が良い結果が出るに決まっている」という方のために、一応検証してみると、これらDGの物件利回りは、5.8%、5.3%と悪くありませんが、1/4くらいの4万人しか人口の無いF所沢市の5.2%と物件利回りには大きな変わりはありません。また、DGのおよそ1.5倍の物件利回りを実現しているAさいたま市桜区の人口は、DGの半分にも届かない95,000人程度しかありません。

人口20万にくらいの都市の利回り実績は5.5%程度

● でも、その1/4しか人口が無い都市でも利回りは5.2%とほぼ同じ

● 一方、人口が半分以下の9.5万の都市での利回りは7.8%のものもある

● 人口が多い方が有利という傾向は、全くない

 人口増加率の高いエリア

人口増加率の傾向も見てみましょう。当社コンサル案件の中で人口増加率が多いのはD川崎市川崎区、E船橋市、F所沢市であり、人口増加率が「マイナス」ないしは1%未満と少ないのは、B横浜市金沢区、C横浜市港南区と、またしてもAさいたま市桜区です。グラフをご覧いただけば、人口増加率が大きいから物件利回りが有利になるという関係性は無い、と言うことがお分かりいただけると思います。

● 人口増加率はグラフから、減少している都市の方が、むしろ物件利回りが高い

● しかし人口が減っている方が有利、などいう事も、論理的にあり得ない

● つまり、人口増加率と物件利回りには関係が無いと考えるのが合理的

 駅乗降客数の多いエリア

駅乗降客数*1が多いのはD川崎市川崎区、E船橋市であり、一日当たり40万人を超えています。一方駅乗降客数が一日当たり、10万人にも満たない都市は、Aさいたま市桜区、B横浜市金沢区、G仙台市太白区ですが、この中から23,000人程度と極端に乗降客数の少ないG仙台市太白区を除外して検討することとします。

普通に考えれば明らかにDEがABよりも有利な利回りを実現しそうなものなのですが、結果はそうはなっておりません。

人口の大小、人口増加率と増減だけではなく、最寄り駅の乗降客数ですら、賃貸アパートの利回りの有利不利には、なんらの関係も無い

*1 駅の乗降客数は鉄道各社の発表によるので中には乗客数だけの公表もあります。この場合は単純に2倍して乗降客数としています。