不動産売却コンサル事例 検証1

投稿者: | 2021年10月3日
90坪超等、大きな土地の上手な売り方の事例報告。

目次

[この記事のポイント]

  • 大きな土地は売りにくく、安くなります
  • でもしっかり公開売りが出来ればそれなりに価格は伸ばせます
  • 逆に本稿の様な調査に基づくコンサルティングがなければ、簡単に本件の買主の立場になり得ます
  • 規制区域外での合法的な敷地分割は、不動産事業者の対応を見れば、検討せざるを得ないでしょう

法令制限に関する大きな誤解

建築協定はあれこれやれば、守る必要がありません。少なくとも建築協定違反の建物を、所轄行政は法的に取り締まることが出来ません。法的に取り締まれないと言うことこそが、「違反者の側こそが合法」であることの証明と言っても良いでしょう。

 

この極めて基本的な都市計画的な知識は、主には知識の不十分な一級建築士によって、多くの住民の間に取り返しの付かないほどの深刻な誤解を形成しています。

 

更に達が悪いのは、地区計画等、法的拘束力も無いエリアの住民が、多の住民や新規住民に対して高さ制限や敷地分割制限などを精神的に課そうとする価値観です。当該エリアの誰一人、敷地分割に係る法的制限を受けていない以上、売却対象土地も当然に、分割売却が有効な手段たり得るかどうかは、少なくとも検討してみる必要があるのです。

 

そうしたスタディも地域の支援もなく無策に売りに出すからこそ、その土地が事業者に流れ、旧住民と計画的に実施すれば90坪→45坪2宅地で収まったものを、90坪→30坪3宅地というような、分かりやすい乱開発の返り討ちに遭うのです。

 

本編ではこうした事情を踏まえて、90坪を超える大きな宅地を事業者ではなくあくまでも個人住宅用地を求める個人消費者に、しかも地域相場を維持しつつ、売却していくコンサルティングの結果検証をまとめます。

経過と全体傾向

半年前のスカイプ協議の折り、本件は大きな土地の集合の中では高値を目指すという売却方針が決定されました。大きな土地は購入できる財力のある買主が限られ、当然に売却には時間が掛かることはご了解いただき、分割売却よりも単価が伸びないこともご承知をいただいた上での作業となりました。

右図は当社の不動産売却コンサルティングでは必須としている、過去の取引実例の調査結果ですが、本件では平成2年頃まで、概ね過去30年の値動きを遡っています。これによると本件エリア(黄色)は価格下落傾向にある中でも、本件取引は4,200万円/90坪=@47万円と、「やや高値層」での取引が実現できたことが分かります。

90坪超の土地の検証

本稿でも、また他の当社サイトでも何度か、「大きな土地は安くなる」ということをお伝えしてきたと思います。改めて分かりやすく言い直しますが、90坪の土地をそのまま売るのと、45坪2つにして売るのでは得られる利益がまるで違うのです。

下図右は上図から90坪超の土地だけを抜き出したチャートですが、ご覧いただければ端的に、90坪超の土地の取引坪単価が、当該エリアの全ての土地取引の分布の下層をさらっていることがご理解いただけると思います。

ただ、本件売買の成果の検証となれば、上手左でも一定の成果が得られているところ、サンプルを90坪超の「売りにくい大きな土地」に絞り込めば、更に成果に価値があることがお分かりいただけると思います。

物件の売却情報を隠さず、公開売りを時間を掛けて丁寧に行うことで、例え大きな土地と言えども90坪程度であれば、対応は出来ると言うことだろうと思います(一人の消費者で買い切ることが難しい200坪、300坪という土地の場合には、同様にはいきません)。

平成28年以降の検証

当該エリアにおける土地売買の「全体集合」から「90坪超」を抜き出しました。ここではそれを更に、「平成28年以降」に絞り込み、直近5年程度の傾向分析を進めます。

まず下図右は取引総額ですが、4千万を越える取引がそもそも最近では非常に少数です(白抜き図形は単なる売出情報で成約できていないものです)。

ちなみに平成30年以降の取引では、青エリアとオレンジエリアに6千万を超えるような取引と、本件と同一の黄色エリアに4,500万くらいのものがあるだけで、次が当地の4,200万となっています。

ただし、青エリアとオレンジエリアは土地の大きさが200坪を超えているため、坪単価は30~40万に下がりますから、決して上手な売り方ではありません。むしろ無策になんの工夫もなく売り出した場合の好例なのではないでしょうか。

また上手左の坪単価を改めて検証しますが、平成の初め頃からだらだら下落してきた黄色い分布が、@47万円は最後にトンと跳ねた価格です。

つまり本件取引は時期まで考慮すると、最近ではこの界隈で、ほぼ一二を争う、坪単価最高値の取引であったと言うことになります。最近、大きな土地をこの界隈で上手に売ったのは、当地と、その前の坪50万くらいの4,500万の取引の2つしかなかったという事になると思います。

それ程、大きな土地を上手に売ることは難しいことなのです。

 プロフィール

 ・売却価格-購入価格 による利益2,300万円

 ・2,300万円/所有期間11年

 = 年間利益 約210万円

 ・約210万円/購入価格5870万円 = 約3.6%

・川崎市内JR駅 徒歩4分

・築11年

・超高層マンションの高層階

・約90㎡ 3LDK+α

・当初購入価格 約5,800万円

・売却成約価格 約8,000万円

・売却期間 一年半

・毎年の値上がり金額 約210万円 /10年での換算利回り 3.5%