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崖崩れの簡単な仕組み
「崖崩れで建物は崩れない」と、いわれても、「いい加減なことをいうな!」と、思われる方がほとんどなのではないでしょうか。ならば言い方を変えたらどうでしょう。「建築基準法は、たとえ崖が崩れたとしても、建物は倒壊しないような基準を定めている」。
皆様のお近くにある高い崖も、急勾配の法地(のりち:実際に宅地として使用できない斜面部分のこと)も、少し大きな地震の度に毎回崩壊などしていないという事実は、多くの方が目の当たりにしていると思います。ではそもそも、崖崩れはどういう条件の場合に発生するのでしょうか。まずなにより簡単に想像できるのは、脆弱な地盤でこそ崖崩れは起こりやすいであろうという事でしょう。しかしここでもう一つ、崖の角度が急勾配になるほど、崩れやすくなるではないかとの推論も、絵的にも想像がしやすいと思います。急勾配の設定角度は地域によって異なるものの、概ね関東ローム層部分では「30°」を超える部分の土砂に関して、崩落の危険性が高いという考え方が一般論となっています。崖崩れの簡単な要因をまとめると以下のようになでしょう。
● 地盤の弱い場所
● 30°等の角度を超えている崖の部分
ここできちんと区別する必要があるのは、例え30°の角度を超える部分であっても、岩盤等の強固な地盤は当然、一定程度の強度があるために、それなりの地震でもびくともしない崖は意外に多いという点です。いわゆる脆弱地盤の反対概念である「安定地盤」は崩れる可能性が比較的小さいということです。
科学的根拠のないイエローゾーン
● イエローゾーンの指定は崩れやすい地質とは無関係
● イエローゾーンの指定は現地調査すらなされていない場合も多い
● イエローゾーンの指定は地図や航空写真から、高い崖を単に塗ってみたという側面も否めない
本質的危険を反映しているかどうかも定かで無いイエローゾーンはさておき、「崖地」の安全と現実的に向き合うという視点で考えれば、建物の建築形態や擁壁対応崖地と建物の安全な付き合い方はほぼ確立されてきています。
ざっと考えただけでも以下の4つくらいの工夫があり、イエローゾーンかどうかなどということ以上に、こうした対処がしっかりなされている建物なのかどうかの方が重要だろうと思います。
崖崩れの性質を踏まえた住宅建設の対処方法
本質的危険を反映しているかどうかも定かで無いイエローゾーンはさておき、「崖地」の安全と現実的に向き合うという視点で考えれば、建物の建築形態や擁壁対応崖地と建物の安全な付き合い方はほぼ確立されてきています。
ざっと考えただけでも以下の4つくらいの工夫があり、これによってイエローゾーンを完全に購入対象の土地から排除するという必要性もなくなってくると思います。
パターン1は崖の特性で触れた30°を超える部分に対して、その地質の強弱に拘わらず、逃げてしまおうというものです。この対処方法の欠点は崖と建物の間に大きな空地が必要となることです。土地が広くないと採用できません。崩れにくい30°の範囲の中に、しっかり建物の基礎を深くして建物を支えようというのがパターン2ですが、これでもまだ、一定の土地の広さは必要になってしまいます。この基礎を杭にして、一気に土地を節約しようという考え方がパターン3であり、この杭が超高層建築物全ての柱の下から場合によっては海底よりも深く打ち込まれているものが、有明や汐留あたりの超高層マンションの基礎・・・・逆に最も多くの方がイメージされる典型的な基礎と杭の形態だと思います。
ちなみにパターン2、3の場合、図中の「崩れやすい」30°を超えている部分が崩壊したとしても、基礎も杭も安定地盤に到達していますから建物本体が崩壊するということはあり得ません。これが先述した建築基準法の、「崖(地盤)が崩れたとしても、建物は倒壊しない」ようにするという考え方なのです。東日本大震災の時に浦安で液状化が発生し、設備の配管は分断されたものの、建物本体は大きな損傷が無く、人災は皆無だったという事例は、この考え方が功を奏したものが多数含まれると思います。