不動産の売り時
景気回復、全国で公示地価が上昇、路線価の動向。売り時はいつか?
不動産評価(査定)のばらつき
まず最初にご理解いただきたいのは、本項で議題とする「不動産の評価」とは、あくまでも市場取引における評価(査定)のことであり、これと「税務上の評価」は全く別なものであるという点です。
先に税務上の評価を説明すると、これは固定資産税の算出や相続税の算出に用いられますが、路線価を用いて計算する場合が多く、その価格で不動産を売るとすれば市場価格からは大きく乖離して格安になる場合がほとんどです。
一方、市場価格は大手不動産業者の「無料査定」を例示すると分かりやすいのですが、路線価などよりは随分高額帯になりはするものの、その中でもそれなりのばらつきが出るものです。同じ土地の各々の評価のイメージを列記すれば以下のようになるかも知れません。
● 路線価 : 7,000万円(例えば)
● B社の買取保証の評価 : 7,500万円
● A社の売却時の査定 : 8,000万円
● B社の売却時の査定 : 9,000万円
● 当社の実際の売却金額 : 10,200万円
この実例で3千万円近く差が出るわけですから、「評価」と一言でくくることが大変危険なことであるということは、ご理解いただけると思います。
この事例は当然に、「同じ土地」に対する市場価格の評価(査定)ですから、売主にとってみれば当社の考え方がもっともありがたいと言うことになるのでしょうが、買主から見れば当社のせいで大きな損害を被ったと言うことになります。
発想の転換
それはつまり、状況や情報の伝わり方次第で、同じ土地を7千万で売る人もあれば、1億で買う人もあるという事を意味します。査定書を作成している不動産業者も含めて、当該その土地が「8千万でなければならない」「絶対に8千万円である」と、言い切れる人間はいないので。
これほどにばらつきが出る、不動産の取引価格、「売り時」や「買い時」という「雰囲気」に流されて取引を控えたり、焦ったりすることが、もっともナンセンスであると当社では考えています。
もう少し丁寧に言えば、社会経済状況がいくら「不動産の売り時である」という状況証拠をそろえているタイミングであったとしても、上記の査定の選択で8,000万円をチョイスしてしまえば、「不動産の売り時でない」タイミングで10,200万円をチョイスした人にはかなわないのです。
「不動産の売り時」でないタイミングで、そんなに高額に売れるのかという疑問はあるでしょう。この答えも当社の場合、非常に簡単で、売らなければ良いのです。
むしろ当社が資産家、投資家の方のコンサルティングの場面で重視しているのは、だからこそ、その状況で、売れなくても構わないと言えるだけの時間を作ることなのです。
まとめ
「不動産の売り時」・・・そんなものは「ない」が当社の見解となります。
断定的要素がなく、証明も出来ないような「売り時」などを意識するのなら、余程重要な「売り方」をきちんと検討すべきであり、その売り方を実現するための時間作り・・・事前の準備に労力を割くべきです。
「不動産の売り時」がいつなのかを言い当てることが出来る人はごくわずかでしょうが、事前に準備するだけならば、誰にでも出来ることだと思います。