ルールがない、または不適切であることにより頻繁に生じる問題には以下のようなものがあります。
- 歴史的建築物が保全できない
- 既成市街地で敷地の細分化に歯止めがかからない
- 分譲型住宅団地での長期的時間軸の問題(高齢化、相続、値崩れ)に対処できない
- 低層住宅市街地や中小製造業が中心の土地利用エリアへの、中高層マンションの等、用途混在
- 地区計画・・行政法規
- 建築協定・・民法上の契約行為(行政法規上の強制力無し)
- 住民協定等‥任意型街づくり(そもそも法律上の強制力無し)
目次
(1) 建築協定の致命的な欠陥について
・・民法上の契約行為なので、行政が全く手出しできず、違反建物には住民自ら費用を集めて、民事訴訟を行う以外に手立てがない。
もう一つの大きな問題は、そうした仕組みを理解していない専門家が一級建築士を中心に多いため、多くの地域に「建築協定を作ればもう大丈夫」などと伝わってしまう場合が非常に多い。
この場合、正直者は規制をされ、非常識で約束事を守る気のない住民と、乱暴な開発を進めたい事業者だけが拘束されないという不公平を招く。
(2) 行政による規制の限界 地区計画、各種条例
(3) 住民協定等(任意型街づくり)の必要性
(4) 全国の住民協定
神奈川県鎌倉市長谷のケース
長崎県長崎市上野町のケース
横浜市鶴見区江ヶ崎のケース
この地区の住民は元々は都内の準工業地域で町工場を代々経営していた。ある日、近隣に50世帯ほどのマンションができたが気にも掛けず、新住民とも良好な関係が数年続いた。ところがある日、更に近隣に100世帯のマンショができると、数名の父兄が区役所に対して、これらの工場が、「くさい、きたない、うるさい、子供が危ない」などと苦情を申し立て始め、ついには区がサポートするので集団移転をしてくれないかという話になった。非常に馬鹿げているが、人数だけを数えればいつのまにか世帯数で住宅所有者が工場所有者を大きく上回っていた。用途地域は準工業地域であった。
神奈川県鎌倉市笹目のケース
念のために改めて書くが、そもそもマンションは地域住民の価値観としては非常識であっても、行政法規上は合法だから建設される。よってマンションの建設計画を変更することは、周りがなにをやろうが事業主以外には出来ないことである。でも協定を作ることで二棟目以降のマンション開発に対して地域の意思を明確に表示できるし、地域が総意として望ましいと考える用途や形態、街の将来像を示すことは可能になる。だからこそ建物の規模等に関する形態制限以外の部分であっても、用途に関しても、もう少し慎重かつ賢明な判断がなされるべきであったのだろうと思う。