2.駅前再開発事業の問題点

投稿者: | 2023年3月11日
規制誘導方策の概説にも書いたとおり、我が国の中心市街地は欧米先進国に比べれば、ほぼノールールという程規制が緩い。にも係わらず、そこから更に大型の規制緩和や助成、税制優遇等、三点セットの支援策を乱用し、すべきでない開発を山ほどやってきた。結果、生じる代表的問題には以下のようなものがある。
  • 再開発ビルは建設できたものの、キーテナントが撤退したり経営破綻
  • 首長が事業成立を公約することも多く、法外な価格で市営駐車場やホールなどの床取得することも多い。
  • 事業成立のため400%の容積率を1,000%等に緩和等、事業関係者への事実上の利益供与となっている。
  • 公共性という観点からは、地域活性化にさして寄与しない、国費活用の高層マンション建設
  • 開発を優先するあまり、地域の意見は黙殺。そもそも時間のかかる議論すらしようとしない。
地方都市中心部での法定再開発事業において、商業キーテナントが撤退したり、再開発ビルの管理会社や事業主体そのものが事実上破綻した例は決して少なくない。これは将来需要を見誤ったり(考えもせずに)、出来るところから開発するというスタンスに原因がある。ほとんどの開発が資産組み替えや単独建て替えの場合との事業採算性の検証を利回りで比較しないのは、そうした比較が始まると事業が実現できなくなるからである。
弊社では実現性のある事業計画提案を検討するためにこそ、施設整備について必要性とか将来的な採算性という観点を重視するが、この検討にこそ、実は住民参加が欠かせない。旧来の「大きなビルさえ出来れば合格」という駅前開発に対する稚拙な価値観と評価基準を、大きく転換すべきなのではないだろうか。
需要があるから作るという考え方自体が、そもそも愚かと言うほかは無い。