3. これまでの相続対策 間違いの代表例

相続 対策 と “相続税” 対策 、の違いがお分かりでしょうか。
この大切で、とても大きな違いを理解していなかった方が、大きく資産を目減りさせ、空室だらけの賃貸アパートを次の世代に残してしまっている、皆様の周りの多くの地主です。

(1) 税理士提案によく見かける間違った相続対策

ハッキリと、「間違い」と言える事業提案は、不動産業者からではなく、税理士(しかも付き合いの長い税理士)から顧客に提案される場合が多いです。

その代表例は以下のようなものです。

  • Step1 アパートを購入、あるいは建設=評価減により税額を圧縮する
  • Step2 そのアパートを賃料が無闇に伸びすぎないように(稼ぎすぎないように)運用する

Step1は当社でも良く行う提案です。
Step2については、購入したアパートの売上が伸びない方が、相続税を少額に押さえ込める期間が長期間になります。つまり、稼がないアパートを購入するという提案です。
特に税理士は納税額を注視していますので、そうした提案になることも理解できなくはありません。
しかし、稼がないアパート事業は、相続が終われば、次の世代にとってはただのお荷物でしかありません。
この不必要な物件は売却し、もっと効率よく、稼ぐ事業に資産を置き換えようと考えるのは、自然なことでしょう。

さてこの物件が、果たして有利に売却できるでしょうか。

稼がないアパートなど、何の魅力もないのですから、有利に売却などできる訳がありません。
売却できないアパートは、どんなに老朽化しようが、そのまま代々持ち続けるか、自身で費用負担して改修、もしくは建て替えるしかありません。

この状況で困窮している資産家というのは、周りを見渡せば、いくらでもいるでしょう。

この事態に消費者が気づくのは、相続が無事、0円納税に成功した、その10年~15年後のことです。
折角相続税を数千万円も節税できたのに、稼ぎもしない不動産で毎年、数百万円の賃料収入を15年間にも渡って損していれば、資産の保全という意味では何の目的も果たしていません。

これが 相続”税”対策 には成功したものの、 相続対策(資産の健全な引き継ぎ) には大失敗をした典型例なのです。

この状況に苦しんだとして、10年以上前の税理士提案を責任追及しないでしょうし、しようと思っても証拠集めすら非常に困難な作業になるでしょう。
そうした事情も手伝い、将来的に顧客が困ることが分かっていても、安易に目先の相続税だけを減額して評価され、紹介した不動産業者からは大きなバックマージンを得ることができるため、稼がないアパートの提案をしてしまう税理士が減らないのです。

(2) 収支は悪くても良いという理由での高額投資

先述した(1)の提案は、主に税理士が行う場合が多く見受けられますが、住宅メーカーからの提案は、主には所有している土地に賃貸アパートを建設するという提案で、建物の建築コストが無闇に高額になるパターンが多くあります。

確かにその方が建物の減価償却が大きくなるため、課税対象額の評価減も毎年の売上からの控除額も増えることは増えます。
しかしもっとシンプルに本質を観察すれば、同じ価値の品物を必要以上に高額に買わされるのですから、この場合、儲かっているのは地主ではなく住宅メーカーと、そこからバックマージンを得ている税理士や銀行だけという事に気づきます。

更に、無駄に高額な建物投資をしてしまうと、相続が終わり、不必要だから売却しようとしても投資額を回収することが非常に難しくなります(当たり前です)。
要するに、相続税対策の時点では節税効果を出せるのですが、その物件を売却する段階で大きな損失を出すので、減税効果と損失が何年後かに相殺するような仕組みになってしまうのです。

やり方が少し違うだけで、結果は(1)とほとんど同じ事となるでしょう。

以上のように、これまでの多くの失敗例には、資産運用段階のビジョンや出口戦略と言ったものがないのです。

確かに相続税をゼロにすることも難しくはなく、ほとんど何の技術も求められないのですが、それだけでは、とても大事なことが漏れているのです。

そんな事以上に本来は、相続発生のその時点から15年後に子孫が困ることがないだろうかと言うことの方を、大切に考えるべきなのです。

よく考えれば分かることですが、そもそも税理士は税務の専門家であって建物の知識など持ち合わせていません。15年後の建物の事を考えろという方が、そもそも無理な注文なのです。

*全ての税理士が不動産業者からの数百万円という高額なバックマージンを受領している訳ではありません。
*紹介料の相場は工事費の5~10%程度と言われています。
*各地の税理士協同組合や農協が、ダイワハウスや積水ハウスなどと連携企業の関係にあります。
*また、ハウスメーカーの中にも税理士の会があり、積極的に紹介料の授受が行われています。