4. 相続対策とすら呼べない間違った対応

前項の手法は15年後等、将来の資産運用で明らかに問題が出るであろうと言うだけで、曲がりなりにも一応の相続税対策にはなっています。

目先の相続税だけを、まずはとにかく下げるということを目指すなら、十分に目的を達成しているでしょう。

しかしながら以下に紹介する対応は、都市伝説のように広く世間で相続対策と呼ばれてきていますが、実は全く対策になっていないばかりか、非常に大きなデメリットがあります。

以下にあげる手法で過去に失敗をした消費者は、むしろ多数派ではないかと思います。これらの事例は、解決できない(今やりたくない)問題を、単に先送りしているだけであって、なんの解決にもなっていないという部分が共通しているかもしれません。

相続対策を先送りして良い事はひとつも無いのだと言うことを、十分にご理解いただければと思います。

(1) 土地を売却して納税資金を捻出する

相続税には10ヶ月という納税期限があります。この期間で土地を売却して現金化すると言うことは勿論可能なのですが、良い取引が出来るのかとなるとどうでしょう。

売却コンサルティングのページに詳述していますが、売主と買主は明確な利害相反関係にあります。納税期日までに土地を現金化したい売主が、同じ物件ならば少しでも安く購入したいと考えている買主に対して、有効な交渉など、最初から出来る訳がないのです。

それでも買主が個人消費者ならば、それでもまだ話はマシかもしれません。ところが相続絡みの物件の買主は、多くの場合、不動産業者と相場は決まっています。なぜならば個人消費者は土地を購入するに際しては、他物件と比較や融資の審査等、取引に相応の時間が掛かるため、期限を切られた取引には馴染まない部分があるのです。

一方、不動産業者であれば、どんなに資金準備の遅い業者でも、一般的には数日で決済が可能です。このため相続物件は不動産業者に流れやすいのですが、不動産業者は仕入れたその土地を、当然に、間違いなく、その金額よりも高額に転売します。自分で住んだりしません。

問題はその時に不動産業者が得る利益です。当社調べですが、売値が仕入れ値の2.5倍などというケースまで非常によく見かけます。商売なのだから、安く仕入れて高く売る(大変に細分化して一宅地の値段は下がります)のは世の常ですが、その利幅が、不動産の場合には消費者の常識を逸脱しているのです。しかしそれを多くの消費者は、なぜか調べようとしないのです。

数千万円とか数億円単位の資産を不利な交渉で処分しなければならなくなったり、中間業者に数千万円の利益を搾取されたり、売主個人としては大損害です。

「相続発生後に土地を売れば良い」という、たった一つの安易な判断が、たった一回の取引で、途方もない損害を消費者に発生させることになるのです。

(2) 滞納して納税資金を作ってから納税する

納税期日を気にせず、滞納前提で高額売却を目指して土地の買い手が現れるまで待つ、と言う提案も良く税理士から聞く手法です。確かに(1)の「不動産業者に仕入れてもらう」よりははるかにマシだと当社も考えます。また、最近の滞納に係る経費は差ほどでもなく、この提案には一定の合理性があるとも言えます。

しかし、そんな簡単に都合の良い買い手が現れるわけもなく、そもそもそんな期待をすること自体が無計画と言えるでしょう。買い手が現れない限り、延滞金を支払い続けます。何年も粘ると言うことは基本的には現地味がないのです。

よって、結局はこの対応も最終的には納得のいかない金額で不動産を処分せざるを得なくなるという結末は変えられず、しかも納税義務を果たしていない人という評価が、その後の将来について回るリスクまで負うことになるのです。