Ginzan,Yamagata
Ju1 19,1999
 

モノクロの、しかも写真のコピーがトップを飾るのは、多分後にも先にも銀山が最初で最後だろう。

実力があれば必要以上に着飾る必要はない。しかし、おさえるところはおさえる・・私はこの街に対して個人的にはそんな印象を持っている。

銀山の魅力はこれほど見事に作り込まれているにも係わらず、正当な評価を受けていないことだろう。 今なら(多分)まだ、「私だけの銀山温泉」という認識が通用しそうな・・そんな身近さだったり素朴さだったりする。

昨年くらいからだろうか、鼻の利くCMプロデューサーが首都圏向けのCMのロケ地として取り上げてはいるが、そんなものでは伝わらない魅力がここにはある。

この時の訪問を助けてくれたのは市役所の観光部局の担当者だったが、その人柄にも驚く。おごったところが一つもない。 こんなに見事な街を作って、近郊だけならまだしも首都圏からも集客しておいて・・・ちょっとくらい胸を張っても良いのではないかと思うのだが、あくまでも奥ゆかしい。

「バブル以降、観光客が【減っていない】ことが自慢です!!」というそのことばは、何年も経った今でも私の記憶にとどまっている。

今でこそ銀山の最寄り駅、大石田には東京から福島経由の東北新幹線つばさが乗り入れている。それでも東京からの平均移動時間は4時間程度。したがって、この新幹線の乗り入れ前にはそれ以上の時間がかかっていたことになる。

お世辞にも恵まれているとは言えない地の利で、東京圏からの集客を減少させなかった程の魅力・・。その実力恐るべしである。

そんな銀山が街づくりに取り組むきっかけとなったのは以外にも「隣地境界の紛争」だった。 行政をからめて協議をするうち、「街」に目を向けた住民達が街灯をガス化しようといいだしたことがきっかけである。

先述の担当者は「やりたければ自分たちも努力をして下さい。設置は行政が力を貸すが運営(ガス料金等)は地域負担ということなら話を進めましょう。」という対応をしたという。

なんという指導か! おおらかというか、呆れるほど素晴らしい!!

こんな行政指導をしてくれる行政はなかなかない。

「力は貸すが必要以上に口を出さず、市民にも応分の努力を求める」

地域の人材育成という観点も含めれば、行政の理想的な姿といっても過言ではないと思う。

通常は目障りな電柱。木製ならば今時かえって味があるが(防災上の問題は別にして・・・)、コンクリートはいただけない。しかし、ここではそれさえも 風景にとけ込む。

前掲の写真の角度を少し変えると「無味乾燥」と他地区では表現されてしまうモルタルの壁面が目に入る・・・しかしこれも「また良し」・・・私のひいき目ではないと写真を見ながら認識を新たにする。

この写真の手前にある手摺のデザインも気が利いてい るが・・・その間の可愛い鉢植えはいったい誰の仕業だろうか?

銀山から学ぶべき物は本当に多い。

ある有名な首都圏の市では都市マスタープランの会合で行政担当者が原案説明に「○○○○らしさ」ということばを繰り返し繰り返し、繰り返し、大切にしたんだと説明していた。

しかし、市民側にはそんなことばの統一見解など全く存在しない。

一方銀山は・・・道路づくりにも思考の一貫性があるのだろうか?片方だけの隅きりを橋の両端にたいがい違いに作ったりしている。:笑

確かに車輌の通行は「カギ型」のルートなので隅きりは互い違いでも良く、河川による物理的制限からこの形状にしかならないのかも知れないが、それ以上に「自分たちにはこれで充分!」という声が聞こえてくる。

銀山の「片側隅きり」の方が、「○○○○らしさ」などという言い訳のもとに書かれた都市マスタープランよりもはるかに雄弁に「地域」を物語っている。

独自性とは「出す」ものではなく、「出てくるもの」だということを銀山は教えてくれる。

しつこい様だが、先述の市でこうした道路を造ろうと思ったら「防災上・・・」ということで大問題になることだろう。

大問題になるが立ち退き問題で困窮し、片側どころか隅きり設置がいつまでたっても実施できず、長期間にわたって危険なままの道が放置されてしまうだろう。

街づくりに置いて、専門家たる者は形式ではなく、地域が、住民が何を求めているかを本来は最も重く受け止めるべきなのである。

こうした行政・住民・その他の多くの人達の苦労が実って・・・銀山は昭和の初めから美しいたたずまいを残しているのである。

そんな訳で銀山は、私が各地で「良い視察先」を聞かれたときに、必ず候補に上げる街の一つである。

私としてはもう一つ、銀山の雪景色のパンフレットを紹介したいところであるが、それは行政担当者に確認後とさせていただきたい。

上記撮影が、「写るんですハイ!」だったことだけが、今回の訪問の大きな心残りである。

●お奨め店舗・スポット

・銀山なのに、「アレ?」っと言うような客対応をする土産物屋があった。ソフトの部分が成熟すれば・・・と、ほんのちょっと残念。私が付けた銀山唯一の減点であった。

●対談者

・メイン通り中程の温泉宿では突然の訪問にも係わらず、メイン掲載のモノクロ写真をもらいそうになった。 「あげますよ。どうぞお持ち下さい。」という店の人に、「そんな大切な物はいただけません。コピーだけさせて下さい。」と断るのに苦労したのを覚えている。

人がよいという表現では片づけられない暖かさを感じる街である。

・役所への訪問もお奨め。本当に親切。

 
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