Asahi-dake,Fukiage,Hokkaido
Dec,2003
 

自然は気まぐれに、しかし時として、我々人間程度の存在では計り知れないほどの美しい表情をかいま見せる。 圧倒的なその美しさは、まさに力としか言いようがない。

「癒し」が必要な時代なのではなく、恐らくは、存在の確認がしたいのだろう。今で言う利便性の追求とは、その圧倒的な存在からの逃避であったのだから。

少なくとも「自然との共存」などという高慢な発想はここでは通用しない。 価値観の違いなどでは到底あり得ない。それは現実を目の当たりにしたときに明らかになる。

上富良野から旭岳吹き上げ温泉までのバスは日に三本。

自然というものに知識のない旅行者が、旭岳〜吹き上げのバス10分の行程を、「歩こう」と考えても誰が責められるだろうか。ましてや半分は下り道である。

・・確かに最初は下りなのである。しかも宿周りで除雪が行き届いていたりする。 素晴らしい景観はもてなしとしか認識できず、何台かの車をやり過ごしてから問題は本格化する。

後悔とは後戻りが出来なくなってから始めて認識できる感情のことなのだ。

 

路面が滑ることは出発前からある程度想定済である。しかし、これ程までに熊っぽい沢がこの行程の中間に存在しようとは知る由もない。周囲には全く人気がない。

真剣に熊に気を付けながら歩くという経験は生まれて初めてのことだ。熊はどうやら時速60kmくらいのスピードで走れるらしいので、見つけるならば相当遠いところで見つけないと、見つける意味がない。

・・などと思い始めてから、何となく自分のデイパックから良い匂いがしているのに気付く。確かに今日の宿は自炊なのでさっきコンビニで出来合いのオムライスを買ってきた。 せめて梅干しのおにぎりくらいにしておけば、こんなに神経を使わずに済んだのかも知れない。

自然に視線は遠くになり、遠くを見れば足下は面白いように滑る。こんなにも下りが辛いとは全くの予想外だ。

しかし折角の上富良野、写真も撮らなくてはならない。実は意外と忙しい。

 

銀色のパジェロが遠くに見えたのは行程も半分を過ぎた頃である。少し遠いが、次の集落も見え始め、道も登りになっていてそんなには滑らない。

少なくとも滑落のような危険はないし、明かりが見えて 熊にも安心しているから発想が自分勝手になる。「もう、写真も大体取り終わったし、折角だから乗せてもらおうか?!」 親切なパジェロのメンバーは当然のように止まってくれた。

「いやー、驚きましたよ!」「こんなところ、例年なら2m以上の積雪で、間違いなく遭難ですよ」「こんな場所を防寒ヤッケも着ず、運動靴で歩いているなんて・・」「7大体陸の最高峰を制覇したくらいのものすごい人か・・ただの馬鹿だって、言っていたんですよ(車内大爆笑!)」。 会話ははずむ。しかし、こちらからは・・返すことばがない。

そんなに無茶なことをしたとは・・。でも、ちょっと反撃してみる。 「そうですか。でも一応、熊には気を付けたんですけど・・こんなところには出ないですよね? 看板もなかったし。」 「いやいや、最近は出ても不思議じゃないし、自分らも気を付けていますよ。看板は気を付けるのが当たり前なんで無いんでしょ?」

実は彼らはとある山岳救助隊の選抜部隊であると後に分かるのだが、まだその時は「熊なんて・・そんなわけはない」とちょっと思ったりしていた。

北海道旭岳・・奥が深い。

●お奨め店舗・スポット

・温泉は凌運閣。確信はないが関節痛に聞いた感じがする。
・吹き上げ温泉は疲労回復に良いか?

●対談者

・差し障りがありそうなので、記述できないが相当な山のプロと楽しく飲む機会に恵まれた。本当に楽しい時間だったのだが、書けないことばかりである。

 
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