相続対策コンサルティング 本編4

投稿者: | 2020年6月27日

目次

アパート投資による相続税対策の落とし穴

皆様の身の回りに、空室だらけになったり、適正賃料が得られない(不人気で賃料が安い)賃貸アパートが山ほどあると思います。これをもってアパート投資に否定的な方は、「リスク」と定義づけているのではないでしょうか。

しかし当社では、こうした問題の生じる賃貸パートは、なるべくしてそうなっていると解釈した方が余程正しいと考えています。折角相続対策で4千万円の納税を回避しても、孫子の世代できちんと賃料が取れなかったり、空室だらけになったりで、節税額以上の損害を出している賃貸アパートも少なくありません。また、事業初期の建物建設費用が高額になることも、事業全体での損害そのものです。

こうした問題のある多くの賃貸アパート事業に共通して登場する専門家に、税理士、デベロッパー、その系列の管理会社などがあります。このチームでは必要な専門性を満たせないからこそ、問題は生じているのです(と、当社は考えています)。

対してそのほとんどに登場しないにも関わらず、当社の事業には必須で登場している専門家として、建築家、事業コンサルタント、独立系管理会社があります。設計施工は完全に分離してデベロッパーは施工だけを、税理士は税務だけを担当します。管理会社が系列親会社であるデベロッパーに対してもの申せないという構造も作りません。

仮に必要な専門性がそもそも欠けている事業であったとしたら、以下のようなチェックがなされていないと言うよりも、出来ないのはむしろ当たり前のことでしょう。

起きている問題の原因は、皆様の選択の中にあるのです。

なお以下の記述は相続対策に限らず、空室になってしまっている多くの賃貸アパートの共通の問題点ですので、詳細は「アパート経営コンサルティング」の頁に譲り、本項では課題のみ列挙することと致します。

設計的チェック

税理士とアパート事業者にお任せで賃貸アパートを建設すると、当然のことですが、主眼は作りやすさ(施工のしやすさ)と過大な建築費による納税額の低減に偏ります。

出来上がったアパートが住みやすいか使いやすいかは、相続税の算定に関係が無いからです。生活動線にストレスがあるものや、家具家電を置いてみると無理なものは、当然に退居や賃料下落の直接的な要因となります。

本項は「相続対策」が主題ですから、もっとも分かりやすいNG間取りをひとつだけ掲載します。この間取り、実は一般的で非常に多いと思いますが、プロの設計者であれば、採用しない人の方が圧倒的だろうと思います。

住宅メーカーやアパートメーカーの設計担当者というのは、自社が集めやすい、サイズも決まっている材料で、効率的に建物を組み立てる方法を熟知しているのであり、いわゆる建築家の様な設計能力があるわけではありません。

なお、ご存じない方が多いのであえて書いておきますが、一級建築士資格はその見極め要素には全くなりません。例えば皆様ご存じの世界的な建築家である安藤忠雄氏などは資格を持っておりませんが素晴らしい設計をする半面、一級建築士であっても設計能力は非常に低レベルと言うこともいくらでもあるのです。

賃貸アパート とてもよく見るNG間取り

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工事コストのチェック

「設計施工の一括発注」という、お手盛り方式では、「設計」と「施工」の相互チェック機能は働きません。これが多くの賃貸アパートで起きている問題の根本的な原因となっています。

 

分かりやすく言えば、設計施工が一体であるならば、工事で利益を出すために、床を二重にしたり必要以上に厚くしたり、壁の遮音性を上げるたり、コンクリートをふんだんに使う図面を書けば済むだけの話です。究極は鉄筋コンクリート造の賃貸アパートでしょう。

 

勿論、工事スペックが上がれば、基本的には入居者の評価も上がりますから、喜ぶ施主もいるかも知れませんが、収益性は投資額と回収額のバランスで決まります。適正利回りを超えて投資額を増やせば、簡単に事業は失敗します。

 

初期の工事費が高いと、いくら高額に賃料を設定すると言っても限度はありますから、顧客満足度を単純にスペックアップで解決するという考え方は、事業的観点からはあまりにも安易です。

 

一般的な大手住宅メーカーは、確かに良いものは作るでしょう。でも同じ事業に対する提案プレゼンで、下表ほどの年間利回りの差が出れば、回収効率では大きく劣る結果にしかなりません。あくまでも事業をやっている訳ですから、収益効率が大幅に下がる提案など、本末転倒と言わざるを得ないでしょう。

逆に言えば建設時点で高額に、余分な報酬を得ていれば、その後のメンテや補修も、「呼べばすぐ来る」という状況は簡単に作れます。それはサービスが良いからなのでは無く、企業努力でもなく、最初に余分にもらっているから出来ることなのです。営業が手もみをしながらやってくることでしょう。

 

一方、上表の施工費の安い施工会社は、建物の仕上がりも収まりも大手住宅メーカーに比べれば明確に劣ります。メンテや補修を実施させるのも一苦労です。そもそも職人の腕から差があるのです。しかしそれを設計者やコンサル等々の専門家を駆使して、収益性を上げられる形に仕上げていくのが事業にというものです。

 

上表の通り、同じ「様な賃貸アパート」を、5千万以上安く建設できれば、多くの専門家を登用しても十分におつりは来ます。なお構造基準や耐震基準は所轄行政がチェックしますから適法性に問題がないことは言うまでもありません。

 

初期の建設コストは非常に大きな投資額になりますから、ここはしっかりと、じっくりと、一度、白紙の状態から、何がご自身の求める姿なのか、考えてた上で、発注先業者を決定されることをお薦めします。

なお住宅メーカーが得た高額な報酬は、その一部が紹介者である税理士などにバックマージンとして流れます。このための集客説明会を、多くの住宅メーカーと税務計算ソフトの供給会社等が合同で全国で開催しています。

*紹介料の相場は工事費の5~10%程度と言われています。また、ハウスメーカーや農協の中にも税理士の会があり、積極的に紹介料の授受が行われています。

*全ての税理士が不動産業者からの数百万円という高額なバックマージンを受領している訳ではありません。

立地のチェック

維持修繕などがそれなりにされているにも関わらず、空室だらけというアパートは、そもそもアパート不適格地に無理矢理建設されている場合が多いと思います。土地には当然に適性があり、先祖代々所有しているからと言うのは、賃貸アパートを建設する根拠にはなりません。

 

また逆に、駅前や駅周辺という立地も弊社ではお勧めいたしておりません。首都圏主要駅の駅前広場に面した土地や駅周辺の土地を購入して賃貸物件を建てれば、まず空室になる事はありません。

 

しかし投資額は土地代だけでとんでもない金額になるため、賃貸事業の回収効率が大きく下がってしまいます。これでは事業を実施する意味がありません。これは地方でも中心都市ならば同様に起こる問題です。

 

駅から遠すぎず近すぎず、このバランスが賃貸アパート事業の、もっとも難しい部分だと言っても良いかもしれません。

運用のチェック

管理会社は管理をするのが仕事ですが、実は募集業務が大きな収入源になっています。この部分を透明化せず、一社にお任せにしている限り、適正に賃料を確保し、伸ばしながら資産を運用していくと言うことは不可能です。

 

このため当社コンサル案件では管理会社の一社独占での入居者募集態勢を是正するところから仕事が始まります。

また、管理会社は清掃も、通信(インターネット)も、ガスも、補修も、防犯関係も、単に手配をするだけであり、専門と言う訳ではありません。これも手間を惜しんで丸投げしていると、仕事の中身は目を覆いたくなるほどの質に低下することがほとんどです。

 

中でもデベロッパー系の管理会社になると、仕事は口を開けていれば降ってくる状態ですから、これ程多岐にわたる管理業務、独立系の管理会社に勝るモチベーションを持てという方が難しいのでは無いでしょうか。また系列関係がある以上、建物に施工が原因で生じた問題を見つけたときに、親会社に向かって堂々と、「直せよ」と言える担当者は何人居るのでしょうか。

 

掃除だけ取ってみても、当社の運用レベル同等の会社は、探す方が難しいのではないでしょうか。

管理会社の選定は施工会社からの流れでなんとなく・・・という方も少ないと思いますが、簡単に書いただけでも、非常に多くの問題があることがご理解いただけると思います。

 

管理会社の選定は考え無しにすべき事ではなく、入れ替えも視野に入れて検討しなければならないほど、賃貸アパート経営にとっては重要事項なのです。

まとめ

目の前の相続税を圧縮することは、技術などいらないほど簡単なことだと書きました。

 

本当に専門的技術が問われ、しかも難易度が高いのは、しっかり利益の出る賃貸アパートを作り、運用していくことの方なのです。

 

賃貸アパートというのは、例え相続対策のために建設されたとしても、相続手続きが完了した後は資産です。よって、相続対策にだけ傾倒しすぎれば、長期的な運用で問題が出るのはむしろ自然です。

 

多くの賃貸アパートで生じている問題は、「お任せ」「丸投げ」が招いていることなのです。

 

 

相続対策で賃貸アパートは、建てさえすれば誰にでも簡単に相続税は0近くまで下げられます。勿論、一定の成果を得ているわけですから成功したと勘違いをする方多いのですが、これこそが最大の落とし穴なのです。