相続対策コンサルティング 本編3

投稿者: | 2020年5月28日

目次

相続税を支払わないという発想

ところで相続税はそもそもの創設目的が「富の再配分」だということは既述の通りです。ならば法の定めに従い、言われるがままに振る舞っていれば、「支払えなくなるのが道理」な訳ですから、発想の転換をしてみてはどうでしょう。

国が支払えない税金を課税してくるのならば、課税額自体を下げてしまえば良い。

法律が支払えない設定になっているのなら、自ら課税評価を法律に基づいて調整し(税理士に裏付け計算をさせて)、支払える金額まで減額すれば話は解決します。

相続税評価額を下げるための代表的な手法を簡単にまとめます。

経年贈与

毎年の100万円贈与と言った方が、多くの方に馴染みがあるかも知れません。あまりにも耳慣れていて、今更というイメージがあるかも知れませんが、確実に被相続人の財産を合法的に減らすことが出来るわけですから、相続対策上は非常に有効な手法であると言えます。

 

ただし最大のネックは、数十年等、相当な長期間にわたって複数の相続人(や親族)に対して実施しないと、大きな資産に対しては焼け石に水であるという点でしょう。また、世代間の資産移転を存命中に推進し、若い世代にお金を使って欲しいという政府の政策により、「贈与」のパターンは昨今、一気に複雑化しています。これらとの同時利用や仕分け、また相続発生時点からの遡り計算等々、かなり専門的知識が求められるため、しっかりと税理士の指導の下に手続きを進める必要があります。

株式投資

相続税の算定において、「現金が最も不利」ということは、多くの方が聞いたことがあるフレーズだと思います。これはその通りで、現金は額面どおりの評価からビタ一文まからないという事が根拠となっています。

 

対して現金を株式等々に置き換えると、その評価は日々変わるわけですから、直近三ヶ月程度の安値評価を採用して構わないというルールになっています。

 

運次第の部分もあり、当社はお勧めすることはないですが、対策になっていないのかと言われれば、そうでもない場合もありますので、一応紹介しておきます。ただし、逆に株価等が急騰した場合、当然に相続税算定上の評価額も上昇しますから、この点は覚悟をしておかないといけません。もっとも、大幅に儲けているもの、怒る筋合いでもないのですが、相続対策としては真逆の方向に行く場合もあると言うことです。

生命保険

生命保険によって相続税の納税資金を準備するという方法も、多くの方がご存じでしょう。ただ、その折角の保険金支払いすらも、一般的な保険加入の形態では相続税の課税対象になってしまうと言うことも、ご存じの方となると一気に数が減るでしょう(控除部分は除く)。

 

基本的に生命保険のような一時金支払いで、相続税等の瞬間的な大きな支出に対処するという思考プロセスは間違っていないと思います。

 

ただし、生命保険に関しては契約形態を工夫することで、より大きな効果が得られるのが通例ですから、極論、この部分だけでも当社のコンサルティングを受けていただきたいと考えるところです。

 

申し訳ありませんが、生命保険は資産背景、家族構成、希望商品等々によって個別事情が大きく反映されるので(反映されるべきなので)、一般論でここに簡単に回答を書くと言うことが出来ないのです。

不動産投資

これも「アパート投資」と言葉を置き換えると一気に耳慣れた相続対策としてご認識いただけるのではないでしょうか。「借金をしてアパートを建てる方法」として、多くの方が認識されていると思いますが、最初に一点、捕捉から入りますが、不動産投資による相続対策はなにも「アパート」を限定で購入する必要も無ければ借金をする必要もありません。

 

前項でも書きましたが、相続税算定上の資産評価において、もっとも不利な現金を、別な種類の資産に置き換えることがポイントです。アパートでなくとも、土地や建物に現金を置き換えるだけで(借入をせず手持ちの現金で不動産を購入するだけでも)、概ね70%程度まで資産評価は下げることが可能です。

 

ところが購入した土地にアパートを建てたり、そもそもアパートが建設されている土地を購入したりすると、その減衰率が更に上昇するため(税務上の評価が下がるため)、結果として「アパート投資」が相続対策の必殺技のようにもてはやされているのです。

 

借家権とか貸家建付地という言葉も、聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。現金を不動産に置き換えたことによって下がった評価が、貸家の建っている土地だとか、借家人がいる建物に関して、所有者の自由度が制限されているという考え方から更に下げられるという仕組みがあるのです。

 

注目すべきはこの下げ幅と適用期間の短さです。当社実績ではアパート投資により、現に4千万円の相続税が400万円に、たった一ヶ月かで圧縮できたという事例まであります。ちなみにこの一ヶ月間という期間は更に短縮できますし、4千万円の節税額も拡大することが可能です。

この様に書くと、アパート投資こそが相続対策の必勝法の様に聞こえるかも知れませんが、対策期間、対応できる資産規模共にこれを上回るものは現行法制化では存在せず、今のとことろもっとも有効な相続対策と言い切れるという、大多数の税理士の考え方に当社も同意をします。

 

 

【相続対策としては】 です。

 

相続税は節税できたものの、10年後、20年後に賃貸アパート経営自体の方がうまく行かなくなったという話は世に溢れています。この問題に対する提案は、次項及びアパート経営コンサルティングの頁にまとめます

法人化

ここに言う法人化とは、不動産という大きな資産の所有形態を、個人から法人に置き換えると言うことを意味しています。相続税は個人には課税されますが、法人には課税されないという制度の根幹的部分を上手に使った方法です。詳しく相続を勉強されている方は既にご存じのことと思います(ただし、法人から得た収入や法人に対する持ち株や出資額に関しては、当然に個人の資産としての相続税の課税対象となります)。

 

ある意味、一つの必勝法と言って良いのかもしれませんが、簡単にできる指摘として、以下のような点に注意しなければなりません。

個人から法人への資産移転に非常に大きなコストが係る。

● 責任ある個人の判断よりも意思決定に時間が掛かり、チャンスを逃す場合が多い。

● また、その判断が関係者全員の間で適切になされるとは限らない。

● 次世代、孫世代が不動産運用という資産管理方法を望むとは限らない。

その場合、一旦法人化した資産を個人に配分することになり、大きなコストが二重に係る。

当然のことですが、全てのことに一長一短があるため、当社では相続対策における法人化に関しては、必ずしもオールマイティではないし、ご家族の構成や考え方によっては、むしろマイナスに作用してしまう場合もあるだろうと考えています。

 

簡単に法人化を勧める専門家もありますが、本来は慎重に将来を見極めて、判断する必要がある事項だと思います。